フランス陸軍においてアルジェリア人やチュニジア人を基本に編成された"ズアーブ兵"に支給されていたとされる“Zauve Trousers”。
その中でもこちらは、極めて珍しい赤色の個体でございます。
一般的に軍用のトラウザーといえば、オリーブやカーキといったミリタリーカラーが主流ですが、本品は異彩を放つ鮮烈な朱。
これは実戦用というよりも、儀礼的な場や特定部隊の象徴性を強調するために用いられた特別な生地と推測されます。

腰回りにゆとりを持たせ、裾にかけて一気に絞り込まれる独特のパターンは、現代のバルーンパンツに通じるシルエットであり、同時代のヨーロッパ軍服史においても極めて特異な存在感を示します。
裾に配されたゴム仕様のギャザーは、ブーツインを前提としたディテールでありながら、非常にモダンな要素を含んでいます。

時間を経てなおしなやかさを残し、赤という色彩も退色を経ることで独特の深みを増した一本。
派手さよりもむしろ奥ゆかしい落ち着きを帯び、長い年月を経た一点物ならではの風格を漂わせています。
ボタンや縫製ディテールにも当時の質実剛健な軍用衣料の精神が息づいており、実用と象徴性を兼ね備えた稀有な一着といえるでしょう。

現在、こうした朱色の個体は市場にほとんど出回ることがなく、ヴィンテージ愛好家やミリタリーウェアの収集家にとっては垂涎の存在です。
単なる軍パンの枠を超え、ファッションピースとしての魅力を放つ本品は、スタイリングに取り入れればコントラストの効いた鮮やかなアクセントとなり、現代のワードローブに新たな奥行きを与えてくれるはずです。

儀礼用ユニフォームという背景、そして希少な朱のカラーパレット。
ミリタリーとモードの境界を軽やかに越える、この時代ならではの感性を纏った特別な一本。まさに、歴史と個性を纏うことのできる逸品でございます。

■size(cm)
ウエスト91/裾幅12/股上38/股下54

■textile
Shell:Cotton100%

■model

■condition
前部に破れがございます。
その他は画像をご確認下さいませ。

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