ARNYS Forestière ― Appointment Only
1978年、イタリアでスタートした"Henry Cotton’s(ヘンリー・コットンズ)"。
ブランド名の由来となったのは、20世紀前半を代表する英国人プロゴルファー、Sir Thomas Henry Cottonです。全英オープンを3度制した名プレイヤーである一方、スポーツ選手としての実績だけではなく、フィールドの上でも崩れることのない端正な装いや、ゴルフ、フィッシングをはじめとするアウトドアを楽しむ独自のライフスタイルでも知られた人物でした。
ブランドは1978年、Stefano Durelliの手によってイタリアで立ち上げられ、Henry Cotton本人もアドバイザーとして関わったとされています。英国的なスポーツウェアやカントリーウェアの伝統をそのまま再現するのではなく、そこへイタリアらしい素材選びや色彩感覚、仕立ての軽やかさを加えることによって独自のスタイルを形成していきました。いわば英国のカントリージェントルマンに由来する実用性と、イタリアの洗練を同じ服の中に共存させること。それが創業以来のHenry Cotton’sを理解するうえで重要な要素です。
1980年代初頭にはオイルコーティングを施したクロスを用いたブルゾンによって知名度を高め、1983年にはHenry Cottonが愛したフライフィッシングに由来するロゴも登場。スポーツを単なる競技としてではなく、その周囲にある余暇や旅、自然、生活そのものまで含めて服に落とし込んでいた点も、このブランドらしいところでしょう。
今回ご紹介するのは、そうした流れを経た2000年代頃の一本。
素材にはテラコッタカラーのコットンモールスキンを採用しています。モールスキンは、高密度に織り上げたコットン生地の表面を起毛させることで、滑らかさと適度な厚みを持たせた素材です。フランスのワークウェアをはじめ実用品の世界でも長く用いられてきましたが、本品ではそのタフな印象を前面に出すのではなく、スラックスの構造へ落とし込むことで、非常に整った表情に仕上げられています。
色味も特徴的で、赤みを含んだオレンジブラウンを基調とする、やや褪せたようなテラコッタカラー。鮮やかなオレンジほど強くなく、ブラウンほど沈み過ぎない絶妙な中間色で、モールスキン特有の細かな起毛によって光の当たり方に応じて濃淡が生まれます。単色でありながら均一になり過ぎず、柔らかな陰影を伴った奥行きのある表情に仕上げられています。
フロントはジップフライ仕様。ウエストにはベルトループを配し、フロント両脇には縦方向のスラントポケットを配置。腰回りには控えめなプリーツを設けています。プリーツを深く取り過ぎず、ヒップから腿にかけて必要な分量のみを確保しているため、ワークパンツ的な太さとは異なる、スラックスらしい端正な線が残されています。
シルエットもHenry Cotton’sらしい部分です。極端なテーパードや誇張されたワイドシルエットではなく、腰回りから腿に適度なゆとりを持たせながら、裾まで比較的素直に落ちるストレート寄りの設計。クリースを強調するドレススラックスほど緊張感を持たせず、それでいてチノトラウザーズほどカジュアルにも振らない。その中間を丁寧に設計したバランスに、このブランドが得意とした“Modern Country”の考え方を見ることができます。
背面には左右に細幅の両玉縁ポケットを配置し、それぞれをボタン留めで処理。右側には小さくHenry Cotton’sのネームプレートが付属します。表側から見えるブランド表現はこの程度に抑えられており、過剰な装飾へ頼らない姿勢も印象的です。
派手なデザインによって時代性を主張する一本ではありません。
英国のスポーツとカントリーカルチャーを起点としながら、イタリアで生まれ、1980年代から90年代、そしてRemo Ruffiniがブランドに関わった2000年前後へと続いていったHenry Cotton’s。
その歴史の中で繰り返されてきた「実用的な服を、素材と仕立てによって上品に見せる」という考え方が、モールスキンという素朴な生地と端正なスラックスの構造によって非常に分かりやすく表れた一本です。
■size(cm)
表記サイズ:48
ウエスト84/裾幅21/股上33/股下75/総丈108
■textile
Shell:Cotton100%
■model
■condition
綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。
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