1961年、パリにて創設された"Yves Saint Laurent(イヴ・サンローラン)"は、20世紀ファッションの歴史を語るうえで欠かせない存在です。
創業者であるイヴ・サンローランは、かつてディオールの主任デザイナーとして鮮烈なデビューを果たし、その若き才能と確かな審美眼で一躍脚光を浴びました。
ディオール退任後、恋人でありビジネスパートナーであったピエール・ベルジェと共に自身の名を冠したブランドを立ち上げると、彼はモードと社会、女性の生き方までもを変革していきます。

YSLの最も革新的な功績のひとつが、男性的なアイテムを女性のワードローブに落とし込んだことです。
1966年に発表されたタキシードジャケット「ル・スモーキング」はその象徴。男らしさの象徴とされたタキシードを、エレガンスとセクシュアリティを伴って女性の装いへと昇華させたこの挑戦は、モードの文脈を超えて社会的インパクトを与えました。
それまでの「フェミニン」に固定されていた女性像を塗り替え、自由と自立を体現するスタイルへと導いたのです。

また、イヴ・サンローランは色彩の魔術師としても知られます。
アフリカ、ロシア、中国、マラケシュなど世界各地の文化や民族衣装にインスパイアされたコレクションを数多く発表し、東洋と西洋の架け橋とも言える独自のスタイルを築き上げました。
アートとの親和性も高く、ピエト・モンドリアンに着想を得た「モンドリアンドレス」は、ファッションが芸術に限りなく接近できることを証明した象徴的な作品です。

YSLのデザインは一貫して「強さ」と「繊細さ」の両立を追求しており、シャープなカッティングと豊かなドレープ、計算され尽くしたプロポーションからは、着る者の内面までも凛と際立たせる力を感じさせます。
特に1970〜80年代にかけては、クチュールとプレタポルテの両輪を駆使しながら、現代女性のライフスタイルに寄り添うラグジュアリーを提示しました。

2002年、イヴ・サンローラン本人はオートクチュールから引退しますが、その後もブランドは幾度かの変遷を経ながら、その精神を継承し続けています。
2010年代にはエディ・スリマンのディレクションのもとブランド名を一時「Saint Laurent」に改称するなど議論を呼びましたが、革新と反骨、そして洗練というYSLの本質は、時代やロゴに左右されることなく脈々と生き続けています。

ファッションという枠にとどまらず、ジェンダーやカルチャー、自己表現の可能性を押し広げてきたYves Saint Laurent。そのアーカイブは、単なる「ヴィンテージ」としてではなく、今も変わらず時代に呼応する"生きたデザイン"として息づいています。

90年代のフランス製「イヴ・サンローラン」によるツータックスラックス。
当時の紙タグがそのまま残るデッドストック品で、時を経てもなお、YSLらしい端正な佇まいが色褪せることのない一本です。

素材はオールコットン。わずかな起毛感とナチュラルなムラ感を湛えたテクスチャーは、カジュアルでありながらどこか上品な印象。
太陽の下ではふわりと光を受けて、屋内では深みあるニュアンスを演出する、非常に奥行きある表情を見せてくれます。

フロントは深めの2タック仕様。腰まわりに自然なボリュームを与えつつ、裾に向かって緩やかにテーパードする美しいシルエット。
無理なく身体のラインに沿いながら、YSL特有の構築性とエレガンスを宿しています。
ヴィンテージとは思えないほど、現代のトレンドや着こなしにもしっかりと馴染むバランスです。

カラーは深みのあるダークグリーン。
落ち着きがあり、秋冬の装いにも馴染みやすい渋さが魅力。
スラックスでありながら、どこかミリタリーウェアのようなタフさを感じさせるトーンで、ニットやジャケットとの相性も抜群です。

ウエストにはベルトループ、裾は未処理のため、お好みでシングルでもダブルでも仕上げが可能。
クラシックに仕立ててドレッシーに振ってもよし、ラフにロールアップして抜け感を楽しむのもおすすめです。

"エレガンスの解体と再構築"を続けてきたサンローランが、90年代に日常着へと落とし込んだひとつの回答とも言えるこのスラックス。
素材・シルエット・色彩、そのすべてにおいて、時代を超えて通用する完成度を誇ります。
コットン素材ならではの経年変化も含め、育てる楽しみを感じていただける一本です。

■size(cm)
表記サイズ:42
ウエスト81/裾幅20/股上36.5/股下80.5

■textile
Shell:Cotton100%

■condition
デッドストックです。
ウエスト部分にうっすらと日焼け跡がございます。
その他は画像をご確認下さいませ。

発送まで4日程度頂戴いたします。

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