ARNYS Forestière ― Appointment Only
2010年秋冬シーズンの"PRADA(プラダ)"より、オリーブカラーのナイロンファブリックを使用したスタンドカラーベスト。
PRADAを象徴する素材のひとつであるナイロンをベースに、表面へ樹脂加工を施すことで独特の質感を与えた一着です。
ミリタリーウェアを連想させるオリーブカラー、身体を包むように立ち上がるスタンドカラー、そして装飾を可能な限り削ぎ落とした直線的なシルエット。一見すると非常にシンプルなナイロンベストですが、素材の表情やファスナー、ポケットの構造まで細かく見ていくことで、PRADAらしい機能服へのアプローチが明確に表れています。
ボディに使用されているのは、オリーブカラーのナイロンファブリック。さらに表面には樹脂によるコーティング加工が施されており、一般的なナイロンとは異なる、わずかに乾いたような独特のタッチと鈍い光沢を備えています。均一で強い光沢ではなく、光が当たる部分だけに不規則な陰影が生まれるのが特徴。着用によって生地に皺が入ることで、その凹凸に沿って色の濃淡が現れます。
この加工による表情は、新品の状態だけで完結するものではありません。着用や経年によって生地表面の風合いが変化し、通常のナイロンとは異なる質感が形成されていく点も、コーティングファブリックならではの魅力です。
Miuccia Pradaのデザインにおいて、ナイロンは単なる軽量素材としてではなく、ラグジュアリーという価値観そのものを問い直すための重要な素材として長く扱われてきました。本来は軍用品やアウトドア、工業製品など実用性を重視する領域で使用されてきた化学繊維を、イタリア製の衣服として精密に仕立てる。その異なる文脈の組み合わせは、PRADAのウェアにも一貫して見られるものです。
本品では、さらに樹脂加工という工程を加えることで、ナイロンそのものの均質さをあえて崩しています。
色についても興味深く、採用されているのは鮮やかなグリーンではなく、グレーを含んだような沈んだオリーブ。軍用衣料を想起させる色でありながら、ミリタリーウェアに見られる大きなフラップポケットやエポレット、ドローコードなどの記号的なディテールは排除されています。ミリタリーの色と機能素材だけを抽出し、PRADAの語彙へ置き換えたようなデザインです。
シルエットは縦のラインを強調した、すっきりとしたノースリーブ型。肩線は比較的直線的に取られ、アームホールから裾へ向かって大きく広がらない簡潔な構成です。中綿を入れながらもアウトドアブランドのダウンベストのような大きな膨らみはなく、あくまで薄くシャープな輪郭を保っています。
通常のパデッドウェアでは、中綿を固定するための横方向のキルティングが外側に現れ、それ自体がデザインとなります。一方、本品のフロントとバックにはそうしたステッチがほとんど現れません。そのため遠目には非常にプレーンなナイロンベストとして見えながら、実際に手にすると中綿による柔らかな厚みが感じられます。
首元には高さのあるスタンドカラーを配置。ファスナーを最上部まで閉じることで首を包み込むような形となり、襟自体にも適度な厚みを持たせることで立体的な輪郭を形成しています。
襟のフロントには面ファスナー式のタブを設けており、ファスナーを閉じた状態では首元をより安定させることが可能です。スポーツウェアや防寒着に由来する実用的なディテールですが、同色で統一することで正面から見た際の存在感は最小限に抑えられています。
フロントはシングルのジップアップ仕様。ファスナーのスライダーには"PRADA MILANO"の刻印が入り、同様の刻印入りパーツはポケットにも使用されています。ブランドロゴを胸や背面へ大きく配置するのではなく、実用部品であるファスナーの小さな金属パーツにのみブランドネームを残す。この控えめな処理も、この年代のPRADAらしい部分です。
腰の左右には縦方向のジップポケットを配置しています。ポケット口は身頃の切り替えへ溶け込むように設計されているため、ファスナーを閉じた状態では存在感がほとんどありません。収納という機能を確保しながら、正面の面構成を極力崩さないデザインとなっています。
前身頃に余計な切り替えや装飾が存在しないため、樹脂加工されたナイロンそのものの皺や光沢が視覚的なディテールとして機能します。
背面も同様に極めて簡潔。ロゴやポケットなどは配置されず、大きな一枚の面としてオリーブのナイロンが広がります。肩から裾まで続く縦長のプロポーションと、スタンドカラーの高さが強調され、機能服でありながら非常に建築的な印象を持っています。
ナイロン、中綿、スタンドカラー、ジップポケットという構成要素だけを見れば、いずれもスポーツやアウトドア、ミリタリーウェアに存在するもの。
しかし、それらをそのまま引用するのではなく、ディテールを減らし、色調を抑え、素材へ特殊な加工を加えることで、既存の機能服とは異なる佇まいへ変換しています。
シャツやニットの上からアウターとして着用することはもちろん、身幅に余裕のあるコートのインナーへ挟むことで、防寒性を補うレイヤーとしても使用できます。
ウールのスラックスやレザーシューズと組み合わせれば、ナイロンの工業的な質感との対比が際立ちます。一方でデニムやミリタリートラウザーズなどと合わせた場合にも、余計な装飾を持たない輪郭によって、一般的なアウトドアベストとは異なる印象に収まります。
機能性のために生まれたナイロンという素材に、樹脂加工による不均一な表情を与え、それを最小限のディテールによって構成する。
素材、加工、機能、そして簡潔な造形の組み合わせによってPRADAらしさを表現した、2010年秋冬シーズンのイタリア製パデッドベストです。
■size(cm)
表記サイズ:M
肩幅44/身幅54/着丈68
■textile
Shell:Nylon100%
Lining:Nylon100%
Filling:Polyester100%
■model
■condition
とても綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。
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