ARNYS Forestière ― Appointment Only
2000年代頃の"PRADA SPORT(プラダ・スポーツ)"より、ウールニットとナイロンを組み合わせたハーフジッププルオーバー。
PRADAが持つラグジュアリーの感覚に、スポーツウェアやアウトドアウェアに由来する機能性を掛け合わせたPRADA SPORT。
1990年代後半から2000年代にかけて展開されたプロダクトには、当時としては先進的だったテクニカルファブリックや人間工学的なパターン、スポーツウェアのディテールが積極的に取り入れられています。
その一方で、単純に機能服へ振り切るのではなく、ウールをはじめとした伝統的な素材とナイロンなどの工業的な素材を同一の服の中で共存させるアプローチも、この時代のPRADAを象徴するもののひとつです。
本品は、その特徴が非常に分かりやすく表れた一着。
ベースとなるのは、ブラックのウールニット。そこへナイロン素材を胸元、肩、背面ヨーク、袖などに配置し、異素材の切り替えによって一枚のプルオーバーニットを構築しています。
最大の特徴は、首元のレイヤードデザイン。一見すると一つのハーフジップですが、実際にはニット側とナイロン側、それぞれに独立したジップを設けた二重構造となっています。内側にはウールニットで形成されたスタンドカラーとハーフジップ。その外側をナイロンパネルが覆い、さらにもう一本のジップを重ねています。
つまり、シャツやニットの上にナイロンアノラックを重ねたようなスタイルを、一着の中で完結させたデザイン。
二本のジップを完全に閉じれば首元に高さのあるスタンドカラーとしてまとまり、外側だけを開けば内側のニットカラーが覗く。両方を開けば襟元に複数のレイヤーが生まれ、着方によって首元の見え方を変えることができます。
レイヤードという視覚的な面白さだけではなく、服そのものの構造として重なりを作っているところにPRADAらしさがあります。
外側のナイロンパネルは、胸元を大きく覆うように配置。その中央には横長のポケットを設け、ジップには小型のPRADA刻印入りパーツを採用しています。さらにメインのジップにも"PRADA MILANO"の刻印が確認でき、黒一色の中にメタルパーツだけが控えめに浮かび上がります。大きなブランドロゴを正面に配置するのではなく、ファスナーやパーツそのものにブランドの存在を落とし込む。この控えめな表現も当時のPRADA SPORTらしい部分です。
素材のコントラストも秀逸です。ウール部分には、細かな編み目を持つブラックニットを使用。柔らかな質感と適度な厚みがあり、袖、身頃、裾、襟といった身体に触れる主要部分をニットで構成しています。
対してナイロン部分は、光の当たり方によってわずかに光沢が現れる滑らかな表面。同じブラックで統一しながら、マットなウールと僅かに光を反射するナイロンによって陰影を作っています。
色を増やすことなく素材だけで切り替えを見せるため、異素材使いが強調されながらも全体の印象は極めてミニマルです。
ナイロンの配置も装飾だけに留まりません。フロントでは胸から肩にかけて大きく使用し、袖では肘付近から前腕へと切り替え。背面では肩からヨーク部分をナイロンとしています。アウトドアウェアやスポーツウェアに見られる補強パネルを想起させる構成ですが、PRADAではそれをブラックのワントーンに落とし込み、都市的なデザインへと変換しています。
特に後ろ姿は印象的です。肩周辺のみをナイロンで覆い、それ以下の大部分はウールニットのまま残すことで、前面ほど複雑な印象を与えません。
フロントではハーフジップとポケット、素材の切り替えが集中する一方、背面は比較的静かにまとめる。この前後の情報量の違いも、服を立体的に見せています。
右裾にはPRADA SPORTを象徴するレッドのラバーパッチ。ブラック一色のボディに対して、唯一と言っていい鮮明な色彩です。小さなパーツですが、ウールとナイロンという異素材構成の中にさらにラバーという工業的な素材を加えることで、この服のテクニカルな性格をより明確にしています。
シルエットは、ニットをベースとした比較的オーセンティックなプルオーバー型。袖口と裾にはリブを設け、スポーティな構造を持ちながらも、極端にボリュームを出さない端正なバランスです。
一枚で着用した際にはニットとして収まりながら、ナイロン部分によってアノラックやトラックトップのような見え方も生まれます。
ニットでありながらアノラックでもあり、スポーツウェアでありながら、素材にはウールを使用する。
クラシックとテクニカル、天然素材と化学繊維、柔らかさと硬質さ。
相反する要素を一着の中に収めながら、最終的には極めてシンプルなブラックのプルオーバーとして成立させています。
PRADA SPORTのアーカイブにはナイロンを全面的に使用したアイテムも多く存在しますが、本品ではあえてウールニットを主体とし、必要な部分にナイロンを差し込んでいる点が特徴的です。
そのため、テクニカルウェア特有の雰囲気を持ちながらも、ニットとして日常のスタイリングに取り入れやすい仕上がり。
ウールスラックスやレザートラウザーズのような端正なボトムはもちろん、デニムやミリタリーパンツと合わせても成立します。
そして首元の二重のハーフジップをどのように開閉するかによって、同じ一着でも印象を変えられる。
素材の切り替えだけで終わらず、レイヤードそのものを服の構造へ組み込んだデザイン。
2000年代PRADA SPORTらしい実験性と実用性、その双方を感じられる一着です。
■size(cm)
表記サイズ:50
肩幅48.5/身幅54/着丈67.5/袖丈66.5
■textile
Shell:Wool100% Nylon100%
■model
■condition
一部箇所に補修痕がございますが、比較的綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。
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