フランス靴史を語るうえで欠かすことのできない名作"641 Chasse(シャス)"は、J.M. WESTONを象徴するモデルの一つであり、実用性とエレガンスを高次元で両立した一足として長く支持されてきました。
本作は、その中でもスエードレザーを用いた、極めて味わい深い個体です。
"Chasse"とはフランス語で"狩猟"を意味します。
その名の通り、元来は森や未舗装路といったラフな環境下での歩行を想定し、堅牢性と安定感を最優先に設計されたモデル。
厚みのあるソール構造、しっかりとしたコバの張り出し、足を包み込むようなラスト設計は、現在のドレスシューズには見られない実直さを備えています。
しかしその一方で、フランス靴ならではの端正なバランス感覚により、無骨さだけに終わらない洗練された佇まいを成立させている点が、本モデル最大の魅力です。

アッパーには、きめ細かく起毛したブラウンスエードを使用。
長い年月を経たことで生まれた濃淡や擦れは、素材が持つ本来の美しさをより立体的に浮かび上がらせています。
履き込まれたスエード特有の柔らかな表情は、革質の良さがあってこそ成立する、奥行きのある風合いを湛えています。

ラストは足幅に余裕を持たせた設計で、甲をしっかりとホールドしながらも窮屈さを感じさせません。
歩行時の安定感は非常に高く、長時間の着用でも疲れにくい構造となっています。
これはJ.M. WESTONが創業以来、一貫して"歩くための靴"を追求してきた証でもあります。

スタイリングにおいては、いわゆる正統派ドレスシューズとは異なり、やや土の匂いを残した存在。
ツイードやフランネルのスラックス、コーデュロイ、あるいはミリタリー由来のパンツとも自然に馴染みます。

流行や時代性を超え、実用の中で磨かれてきたフランス靴の完成形。
本一足は履く人の生活に寄り添いながら、静かに、しかし確実に品格を積み重ねていく存在です。
靴を"消耗品"ではなく、"時間を共にする道具"として捉える方にこそ、手に取っていただきたい名作です。

■size(cm)
表記サイズ:6D
ソール全長28.5/底幅10.5

■textile
Shell:Leather100%

■model

■condition
綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。

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