英国靴の最高峰として、その名を知らぬ者はいない"JOHN LOBB(ジョン・ロブ)"。
本品は、その中でも比較的古い時代に製作された、ウィングチップ仕様のレザーシューズ。
現行とは一線を画す、気品と重厚感、そして職人の息遣いを感じさせる佇まいが宿る一足です。

ジョンロブは1866年、ロンドン・セントジェームズストリートにて創業。
王侯貴族や文化人の足を長年支え続けてきたことで知られ、現在もビスポークを中心としたラインは英国にて独立して継続。
一方、パリ支店から派生したレディメイド(既成靴)ラインは、1976年よりエルメス傘下のもとで展開されています。
本品は、そのエルメス傘下に移行した後の比較的初期にあたる時期に作られたものと思われ、
まだまだクラシックな英国靴の面影が濃く残るモデルです。

アッパーには、均一で美しい肌理(きめ)を持つ上質なカーフレザーを採用。
しっとりとした艶を放ち、目立ったシボ感やシワの暴れがない、繊細で密度のある表情。
磨くことでガラスのような光沢が現れる一方、陰影を帯びることで革本来の深みも引き立ちます。
その革質の良さだけでも、この時代のロブの実力が窺えるでしょう。

ウィングチップのパターンは、ごく控えめで繊細なパンチング。
派手さを一切排し、ディテールのすべてが抑制の効いたトーンで統一されています。
そのため、フルブローグに分類されるデザインでありながら、過剰な装飾感を感じさせることはなく、
むしろフォーマルな空気すら漂う洗練された雰囲気を纏っています。

木型は、クラシックなロングノーズ寄りのバランス。
トゥはほどよくシャープで、甲の立ち上がりから土踏まずのくびれに至るまで、
立体的でエレガントな構成となっています。
足を入れると自然に姿勢が整い、スーツスタイルはもちろん、
ミニマルなコーディネートにも凛とした重みを与えてくれる存在感を備えています。

内側のライニングには「JOHN LOBB」の刻印が残り、
インソールも手入れの行き届いた状態を保っており、前オーナーの扱いの丁寧さが伺えます。
また、アウトソールはレザーソールで、堅牢かつ美しく削り出されたエッジの仕上げにも、当時の技術の高さが如実に現れています。

現行品とは違い、この時代のロブはパリ製であっても英国の伝統的な製法や哲学が色濃く反映されており、
既成靴でありながらビスポークに迫るような構造の密度を感じさせます。
その一足が時間を経てなお、これだけの存在感と品格を失っていないことこそが、真に良い靴の証明ではないでしょうか。

“足元に思想が宿る”
その言葉を、何よりも静かに説得力を持って語るのが、この靴なのです。

■size(cm)
表記サイズ:7 1/2
ソール全長29.5/底幅11

■textile
Shell:Leather

■condition
全体的に着用感がございます。
その他は画像をご確認下さいませ。

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