2000年代初頭、"GIORGIO ARMANI(ジョルジオ・アルマーニ)"がそのクラシックな精神を、時代の空気とともに再解釈した一足。
本作は、ストレートチップにブローギングを添えた、ブラックレザーのドレスシューズです。

その第一印象は、極めて静かで洗練されています。
過度な主張は一切なく、どこまでも端正で品のある顔立ち。
けれど、ただのフォーマルでは終わらせないのが、この靴の魅力です。

アッパーには、シボ感のある柔らかなブラックレザーが用いられています。
表情豊かでありながら、目立ちすぎることのない粒の細かさ。
触れれば、しっとりとした質感とともに、足元に吸い付くような柔らかさが伝わってまいります。

この革が醸し出すのは、いわゆる「硬質なドレスシューズ」の緊張感ではなく、
むしろ、長く寄り添うことで育つような、寛容で優しいニュアンス。
日常のなかでふと足元を見るたびに、どこか安心を覚えるような、そんな不思議な魅力があります。

ストレートチップという構成は、あくまで王道のフォーマット。
そこに施されたブローグの装飾が、形式の中にほんの少しの遊び心と詩情を加えています。
その穿孔のひとつひとつは、装飾であると同時に、空気の抜け道のようでもあり、
シューズ全体の緊張感をやわらかく解いてくれるのです。

ソールはやや薄手に仕上げられており、着地の感覚は軽やかで、足取りは驚くほど滑らかです。
クラシックな見た目に反して、長時間の着用にもストレスを感じにくい仕様は、
アルマーニならではの「日常に寄り添うエレガンス」の精神が息づいているように感じられます。

また、甲の高さや幅感も含め、シルエット全体にどこか自然な丸みがあり、
ドレスシューズでありながら、どこか「削ぎ落とされたやさしさ」のようなものが漂っています。
それはきっと、デザインの中に「緊張と緩和」が見事に共存しているからこそでしょう。

このような佇まいの靴は、装いを選びません。
スーツに合わせればきりりと全体を引き締め、
カジュアルなスタイルに添えれば、全体に重心を与えてくれるような役割を果たします。
どんな場面でも、決して前に出すぎることなく、しかし確実に全体を支えてくれる——
そんな「静かな主役」とでも呼びたくなる一足です。

そしてなにより、この靴は「履いて完成する美しさ」を持っています。
経年とともにシボの表情が育ち、歩いた分だけ記憶を刻む。
それは、単なるプロダクトではなく、自分の時間とともに歩む「相棒」のような存在になってゆくでしょう。

美しさとは、決して表層だけのものではありません。
沈黙の中に芯を持つこの一足は、そのことを静かに語りかけてきます。

■size(cm)
表記サイズ:10
ソール全長32.5/底幅11.5

■textile
Shell:Leather

■condition
全体的に着用感がございます。
その他は画像をご確認下さいませ。

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