無機質なチェーンが有機的な表情を持つとき、そこには造形への純粋な探究があることでしょう。
本品は、そうした意志の産物。
抑制の効いたデザインではなく、むしろ形状は不揃いで、リズムも崩れています。
しかし、その不規則性の中に宿るのは、工業製品が持ち得ない一種の"ゆらぎ"であり、手工芸がもたらす温度感そのものであります。

このブレスレットの最大の特徴は、リンクのすべてがゆるやかに歪んだフォルムを描いている点にあります。
まるで金属が一度溶かされ、自然の力で再び固められたかのような、有機的で柔らかな歪み。
その形状は、視覚的な緊張感を生み出しつつも、どこか人肌のような優しさを帯びています。
連なるパーツは、捻れて絡むようにして連なっており、その歪みは、計算された美というよりも、むしろ感覚的なバランス感覚によって成立しているかのような、ある意味で"即興性"のようなものすら感じさせます。
完全な均整や対称性を排し、あえて"乱れ"を織り込むことで、むしろ静かな美を引き立てるという逆説的な美意識。
ミラノを中心とした当時のアヴァンギャルドなデザイン運動にも共鳴するものであり、実用性と造形性の狭間に揺れるアクセサリーとして非常にユニークな立ち位置を持っています。

素材にはシルバー925が用いられており、精緻な鋳造技術と手仕上げの技巧が組み合わされていることが見て取れます。
リンクの継ぎ目や、表面のエッジ処理などはすべて職人の手によって微調整されており、その手触りは滑らかでありながら、ところどころにわずかな起伏や指先に引っかかるような感触を残しています。
これらの微細なテクスチャーは、目に見えないところでこのブレスレットの存在感を構築しており、無意識のうちに手首に意識を向けさせることでしょう。

時に不揃いなものこそが、最も強く記憶に残る。
それはまるで、完璧さを追い求める社会への静かなアンチテーゼのよう。
歪みが語る個性、捻れが引き寄せる親密さ、バラつきが許容する余白。
1970年代という時代に手仕事で編まれたこのチェーンブレスレットは、そんな曖昧で、しかし確かな価値を、静かに今に伝えてくれます。
音のない詩、動かぬ彫刻、日常に溶け込むアート。
名もなき造形美が、またひとつ、手首の上で静かに鼓動します。

■size(cm)
全長19.5

■textile
Shell:Silver 925

■condition
使用感はございますが、比較的綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。

発送まで4日程度頂戴いたします。

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