ARNYS Forestière ― Appointment Only
2011年春夏、"Stefano Pilati(ステファノ・ピラーティ)"がクリエイティブ・ディレクターを務めていた時代の"Yves Saint Laurent(イヴ・サンローラン)"より、ダークネイビーのコットン生地を使用したダブルブレストジャケット。
フランスの伝統的なエレガンスと、ミリタリーウェアに由来する機能的なディテールを融合させた、非常に完成度の高い一着です。
2004年にメンズウェアのクリエイティブ・ディレクターへ就任したステファノ・ピラーティは、創業者イヴ・サンローランが築いたクラシックな美意識を継承しながら、現代的なシルエットや構築的なデザインを取り入れたコレクションを展開しました。特に、テーラリングを基調としながらワークウェアやミリタリーウェアの要素を再解釈する手法は、彼が手掛けたサンローランのメンズコレクションにおける特徴の一つです。本品も、そうしたピラーティのデザイン哲学が随所に表れたジャケットです。
まず目を引くのは、一般的なダブルブレストジャケットとは大きく異なる、独創的なフロントデザイン。左右に配置された二列のボタンは、ミリタリーコートやヴィンテージのユニフォームを想起させる端正な構造です。
通常のダブルブレストに見られる大きなラペルを排し、首元には高さのあるスタンドカラーを採用。
襟の前側に設けられたボタン付きのストラップによって、首元を立体的に包み込む独特なデザインに仕上げられています。襟を開いた際には自然な立ち上がりが生まれ、閉じた際には首元まで覆うシャープなシルエットを形成。着用方法によって印象を変えられる点も、本品の魅力です。
また、フロントの打ち合わせ部分には左右非対称の構造が取り入れられており、クラシックなダブルブレストの形式を保ちながらも、どこかアバンギャルドな雰囲気を感じさせます。
生地には、上品な光沢を持つダークネイビーのコットン素材を使用。適度なハリとしなやかさを兼ね備えた質感で、身体の動きに合わせて自然なシワや陰影が生まれます。表面には細かな綾目が確認でき、光の当たり方によってブルーやチャコールにも近い色合いを見せる、奥行きのあるカラーリングです。一般的なネイビーのコットンジャケットと比較しても、落ち着いた色彩と生地の表情が印象的で、洗練された雰囲気を備えています。
フロントには左右それぞれ上下二段のポケットを配置。上段には縦方向に設けられたフラップポケット、下段には横方向のフラップポケットを採用しています。一般的なサファリジャケットやフィールドジャケットのポケット構造を思わせながら、配置や角度を変えることで、独自のデザインへと昇華されています。
特に上段のポケットは、開口部を斜めに配置した立体的な構造が特徴的。手を差し入れやすい実用性と、フロント全体に動きを与えるデザイン性を兼ね備えています。
下段のポケットは比較的シンプルな形状にまとめられ、上下で異なるディテールを組み合わせることで、全体に抑揚を持たせています。
肩周りはやや落ち感のある自然なラインで構成され、袖には適度なボリュームを確保。ミリタリージャケットに見られる力強いシルエットを残しながらも、過度に構築的な印象にはならないバランスです。
袖口にはボタン付きのアジャスターストラップが設けられ、フィット感の調整が可能。
ボタンの配置や縫製ラインも細かく計算されており、機能的なディテールを装飾としても生かした仕上がりとなっています。
背面にも、本品ならではの特徴的なディテールが見られます。背中の中央には縦長の長方形を描くように生地の切り替えが施され、その周囲には直線的なステッチワークを配置。肩から背面へと続く縫製ラインが、シンプルな後ろ姿に立体感を与えています。さらに、ウエスト付近には横方向の切り替えが設けられ、背面全体のバランスを整えています。
裾にはボタン付きのセンターベントを採用。動きやすさを考慮した実用的な仕様でありながら、後ろ姿にさりげないアクセントを加えています。
このように、正面だけではなく背面にも独自のパターンワークが取り入れられている点から、デザインに対する強いこだわりが感じられます。
シルエットは腰周りを覆う程度の着丈に設定され、身幅には適度なゆとりを持たせたバランス。コートほどの重厚感はなく、一般的なテーラードジャケットよりもカジュアルに着用できる、非常に使い勝手の良い形状です。
コットン素材ならではの軽快さがあるため、春先や秋口のライトアウターとしてはもちろん、インナーの調整によって幅広い季節に対応します。
細身のウールスラックスと合わせれば、サンローランらしいシャープで洗練されたスタイリングに。
一方で、ゆとりのあるトラウザーズやデニムと組み合わせることで、ミリタリーウェア由来の力強さを引き立てることもできます。
特徴的な襟元やフロントのボタン配置によって、シンプルなインナーの上から羽織るだけでも十分な存在感を発揮します。
伝統的なテーラリング、ミリタリーの機能美、そして現代的なデザインを一着の中に共存させた、ステファノ・ピラーティ期ならではの仕上がり。
ブランドの歴史を尊重しながら、既存のクラシックウェアを新たな視点から再構築した、2011年春夏のYves Saint Laurentを象徴する美意識が感じられる一着です。
■size(cm)
表記サイズ:54
肩幅49/身幅59.5/着丈77/袖丈68
■textile
Shell:Cotton100%
■model
■condition
着用感はございますが、綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。
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