ARNYS Forestière ― Appointment Only
1981年、Giorgio Armaniの若々しく都市的な側面を担うラインとして誕生した"EMPORIO ARMANI(エンポリオ・アルマーニ)"。
本品は、一見すると極めて端正なテーラードジャケットでありながら、襟の扱いひとつで全く異なる表情を見せる一着です。
最大の特徴は、通常のテーラードカラーとして開くことのできる襟を、そのまま立ち上げ、フロント最上部まで留められる設計。襟を開いた状態では、オーソドックスなノッチドラペルを備えた3つボタンのジャケットとして現れます。ゴージラインは比較的低く、ラペルにも過度な幅を持たせていません。胸ポケットを省略し、腰には左右のウェルトポケットのみ。一般的なスーツジャケットの構成要素を減らすことで、テーラリングを残しながらもビジネスウェア特有の堅さを感じさせない顔つきに仕上げられています。
しかし、襟を立てると印象は大きく変化します。ラペル部分が身体の中心へ向かって折り重なり、首元を包み込むようなスタンドカラーを形成。その状態で最上部のボタンを留めるとフロントは4つボタンとなり、テーラードジャケットというよりも、ヨーロッパのワークジャケットやスタンドカラーコートを短く仕立てたような佇まいへ変化します。
単純に「襟を立てられるジャケット」なのではなく、開いた状態と閉じた状態の双方が成立するよう、襟そのものの大きさやカーブ、第一ボタンの位置まで計算されている点が面白いところです。
そして、この構造と非常に相性が良いのが生地です。ウールを主体としながら、ほぼ同程度のヴィスコースを混紡したファブリックを採用。さらに僅かな伸縮性を加えることで、一般的な梳毛のテーラリング生地とは明確に異なる柔らかな質感が生まれています。
表面は完全にフラットではなく、細かな織り目と毛羽が混在したマットな表情。ブラックからチャコールの間を行き来するような色調で、光を強く反射することなく、織りの凹凸によって静かな濃淡が現れます。
ウールだけで組み立てた重厚な秋冬生地とは違い、ヴィスコースが入ることで生地に柔軟性があり、身体に沿って自然に落ちる。このドレープが、アルマーニというブランドらしいポイント。
Giorgio Armaniが1970年代以降のメンズウェアにもたらした大きな変化のひとつが、男性のジャケットから過剰な硬さを取り除いたことでした。芯地や構築性によって身体を強く補正する従来型のスーツに対して、アルマーニは肩や胸周りの構造を柔らかくし、生地そのものが身体の動きに追従するジャケットを追求します。結果として生まれるのは、身体を「形にはめる」服ではなく、着る人の動きによってシルエットが完成する服です。本品にも、その考え方が非常に素直に表れています。
正面から見ると肩線は自然に落ち、胸から裾へ向かって強い絞りを作りません。ウエストを極端にシェイプすることなく、縦方向へ緩やかに流れるライン。背面もセンターシームを軸とした簡潔な構成で、ベントや過度な装飾によってシルエットを複雑に見せることを避けています。
特に横から見た際の袖付けが特徴的です。肩周辺を硬く持ち上げるのではなく、肩から上腕へ生地が連続するように落ちていくため、テーラードジャケットでありながらカーディガンに近い自然な感覚で着用できます。
ここにストレッチ性を備えた柔らかな生地を組み合わせることで、見た目の端正さに対して着用感は非常にリラックスしたものになります。
ボタンも、生地とほぼ同色のブラック。光沢を抑えたシンプルな4つ穴ボタンを採用し、金属パーツやロゴといった視覚的な主張はありません。ポケットも細いウェルト仕様とすることで、生地の面をできる限り途切れさせないよう処理されています。
そして、この装飾性の低さこそが本品の魅力です。EMPORIO ARMANIというと、イーグルロゴやスポーティなアイテムを想像することも多いブランドですが、その根底にはGiorgio Armani本体と共通するテーラリングへの考え方があります。
本品は、その部分を非常に純粋な形で感じられる一着。
襟を開き、シャツやハイゲージニットを合わせれば、柔らかなアンコンストラクテッドジャケットとして。
反対に襟を立て、最上部までボタンを留めれば、ジャケットとハーフコートの中間のようなミニマルなアウターとして。
インナーにTシャツを入れて袖を軽く捲ればさらにカジュアルになり、タートルネックやモックネックを合わせれば、生地の持つチャコールの奥行きとスタンドカラーの造形がより強調されます。
一着の中にフォーマルとカジュアルの境界を設けず、着方によってその位置を変えていく。
テーラードジャケットの記号を残しながら、それを固定された着方から解放するという発想は、アルマーニが長く続けてきた男性服へのアプローチとも自然に重なります。
素材の柔らかさ、抑制された色彩、身体を強制しないシルエット。そして何より、襟を開くか閉じるかという僅かな操作によって、クラシックなテーラードとスタンドカラーのアウターという二つの顔を行き来する設計。
派手なディテールではなく、着用した時に初めて理解できる構造によって違いを作る。
EMPORIO ARMANIらしいデザインが凝縮された一着です。
■size(cm)
表記サイズ:48
肩幅45/身幅50/着丈76/袖丈61
■textile
Shell:Wool48%/Viscose47%/Elastane4%/Nylon1%
Lining:Nylon
■model
■condition
全体的に綺麗なコンディションです。
その他は画像をご確認下さいませ。
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