ARNYS Forestière ― Appointment Only
ベルギーを代表するデザイナーの一人、Dirk Bikkembergs(ダーク・ビッケンバーグ)が手掛けたブラックのニットジップアップブルゾン。
一見すると非常に簡潔なブラックのニットブルゾンですが、身体に沿う立体的なパターン、高さを保つためにボタンを組み込んだ襟、金属製のオリジナルジップパーツなど、細部を見ていくことでBikkembergsらしい構築的なデザインが浮かび上がる一着です。
Dirk Bikkembergsは1959年ドイツ・ケルン生まれ。幼少期をベルギーで過ごし、アントワープ王立芸術アカデミーでファッションを学びました。
1980年代半ばには、Ann Demeulemeester、Dries Van Noten、Walter Van Beirendonck、Marina Yee、Dirk Van Saeneらとともに、後に"Antwerp Six(アントワープ・シック)"と呼ばれる世代の一人として国際的な注目を集めます。
当時のアントワープから登場したデザイナーたちは、それまでのパリやミラノを中心としたファッションとは異なる方法で、服の構造や身体との関係を再考しました。その中でもBikkembergsは、男性の身体性やスポーツ、ユニフォームといった要素を自身のデザインへ積極的に取り込んでいった人物です。
テーラリングをそのままスポーツウェアへ置き換えるのではなく、身体に沿ったパターン、機能的なディテール、強い直線、金属製のパーツなどを用いながら、男性服そのものを再構築していく。その姿勢は1990年代から2000年代にかけてのコレクションで特に鮮明になっていきます。
本品にも、その思想が非常に分かりやすい形で現れています。
素材はコットン51%、アクリル49%。天然繊維であるコットンを主体としながら、ほぼ同率でアクリルを混紡したニット生地です。コットンニット特有の比較的さらりとした表情を残しつつ、アクリルを組み合わせることで生地に均一性が生まれ、シルエットを形成する適度な厚みも感じられます。
ブラック一色で統一されているため遠目には非常にミニマルですが、近くで見ると細かな編み組織が確認でき、光の当たり方によって表面にわずかな陰影が現れます。
本品で特に注目したいのが、襟の構造です。一般的なジップアップニットの場合、高さのある襟は着用しているうちに左右へ開いたり、外側へ倒れたりしやすいものですが、こちらは襟部分にボタンを配置。フロントジップを上まで閉じた状態で襟をボタン留めすることができるため、首元に高さを持たせた状態でも襟の形状が崩れにくく設計されています。
さらに背面側にもボタンが一点配置されており、単純に「襟を高くした」というだけではなく、襟そのものを一つの構造物として成立させようとする意図が感じられます。
装飾のためにボタンを加えるのではなく、形状を維持するための機能的なパーツを、そのままデザインとして見せる。こうしたアプローチには、Bikkembergsが長く取り組んできたスポーツウェアやユニフォームに通じる合理性があります。
そしてもう一つ、この服を象徴するのがフロントのジップパーツです。ジップトップには長方形の大きなメタルプレートが取り付けられ、"DIRK BIKKEMBERGS"の文字を大胆に刻印。ブラックのニット生地の中央に、無機質なシルバーカラーの金属が一点だけ配置されることで、極めてシンプルな構成でありながら強いアクセントとなっています。
ブランドロゴをプリントや刺繍として加えるのではなく、本来は開閉のために存在するジップの引き手そのものをブランドのアイコンへと変えている点も秀逸です。
柔らかなニットと硬質な金属。
ブラックとシルバー。
素材と質感の対比によって、余計な装飾を加えることなくBikkembergsらしい緊張感を生み出しています。
シルエットは比較的コンパクト。裾には幅広のリブを配置し、袖口も同様にリブで引き締められています。
肩から胸、脇へと続くラインにも特徴があり、アームホール周辺は単純な直線ではなく、身体の形状を意識した曲線的なパターンで構成されています。
平置きした状態だけで完結するのではなく、実際に身体を入れることで各ラインが立体的につながり、シルエットが完成する設計です。
特に短めの着丈と幅広の裾リブによるバランスは、現在の視点から見ても非常に新鮮です。大きなボリュームによって身体を覆うのではなく、身体と服との距離を近づけることで着用者自身のフォルムをデザインへ取り込む。この考え方は、Bikkembergsが継続的に追求してきた「身体性」とも自然につながります。
背面は対照的に極めて簡潔。大きな装飾を設けずブラックのニット面を広く残しているため、正面のメタルジップや襟周辺のボタンディテールがより際立っています。
一見した際の静かな佇まいとは対照的に、細部を追っていくほどデザイナーの考え方が見えてくる一着。
アントワープのデザイナーらしい構築的な視点と、Dirk Bikkembergsが追求したスポーツ、身体、機能性という要素を、日常的なニットブルゾンというフォーマットの中で堪能していただけるプロダクトです。
■size(cm)
表記サイズ:M
肩幅40/身幅50.5/着丈54/袖丈66
■textile
Shell:Cotton51% Acrylic
■model
■condition
とても綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。
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