ARNYS Forestière ― Appointment Only
1890年代にニューヨークで創業したSULKA。
現在ではその名を知る人も決して多くはありませんが、かつてはアメリカを代表する高級紳士洋品店のひとつとして、ニューヨークを中心にロンドン、パリなどにも店舗を構え、世界中のエグゼクティブや著名人から支持されたブランドです。
SULKAの歴史は、もともとシャツメーカーとして始まったことからも分かるように、紳士服の中でも特にシャツとの結びつきが強いブランドでした。
1890年代にニューヨークでAmos SulkaとLeon Wormserによって創業され、当初はシャツを中心としたビジネスからスタート。その後、ネクタイやスカーフ、ドレッシングガウン、スモーキングジャケットなどへと世界を広げながら、20世紀前半には高級紳士洋品を扱う名門へと成長していきます。
1920年代頃にはニューヨークの5番街をはじめ、ロンドンのOld Bond Street、パリにも店舗を構えており、アメリカ生まれでありながらヨーロッパのエレガンスを取り込んだ独自のスタイルを築いていました。SULKAの顧客には、ウィンザー公、クラーク・ゲーブル、ヘンリー・フォードなど、当時の社交界や政財界、ハリウッドを代表する人物たちの名前が並びます。
またSULKAはシャツだけではなく、特にシルクを使ったネクタイやスカーフ、ドレッシングガウン、スモーキングジャケットなどでも高い評価を受けていました。つまりSULKAがつくっていたのは、単なる「洋服」ではなく、当時の紳士が日常から社交の場までを過ごすためのワードローブそのもの。上質な素材を使い、クラシックでありながら堅苦しくなりすぎない、品のあるスタイルを得意としていました。
今回の一着も、そんなSULKAらしさを感じさせる非常に美しいストライプシャツです。
白をベースに、淡いブルーやベージュ、ブラウン系の細いストライプが重なった繊細なファブリック。ストライプ自体は非常にクラシックな柄ですが、色の組み合わせと細かなピッチによって、一般的なドレスシャツとは少し違った柔らかな表情を見せています。
特に美しいのが、このシャツの襟の佇まいです。大きめに設計された襟は、ジャケットを着た際にはしっかりと存在感を持ちながら、シャツ単体で着てもクラシックな雰囲気をつくってくれます。襟を開けて着れば、当時のアメリカやヨーロッパの洒落た紳士服を思わせる、肩の力の抜けたスタイルにも自然に馴染みます。
そして、このシャツはMADE IN ITALY。
ニューヨーク発祥のSULKAが、ヨーロッパの感性を取り入れながら展開していたことを考えると、このイタリア製という背景も非常に興味深いポイントです。実際にヴィンテージのSULKAにはイタリア製のシャツが存在し、細かな運針や上質な素材、クラシックな仕立てを特徴とする個体が見られます。
SULKAの面白さは、アメリカのブランドでありながら、フランスやイギリス、イタリアといった当時の紳士服文化を横断しながら、自分たちのスタイルを築いていたところにあります。ニューヨークのモダンな感覚と、ヨーロッパの伝統的なシャツづくり。その両方を背景に持っているからこそ、SULKAのヴィンテージには独特の空気があります。
一見するとクラシックなストライプシャツですが、デニムやチノに合わせるだけで、どこか品のあるカジュアルスタイルに仕上がります。もちろんウールのトラウザーやジャケットと合わせれば、よりドレス寄りのスタイルにも。あえて袖を捲り、ボタンをいくつか開けてラフに着ても、このシャツが持つ生地や襟の美しさがしっかりと残ります。
そしてSULKAを語るうえで面白いのが、後世にもそのスタイルが残っていることです。映画『007 ゴールデンアイ』では、ピアース・ブロスナン演じるジェームズ・ボンドのシャツにSULKAが採用されました。クラシックなドレスシャツでありながら、どこか現代的で洗練されたSULKAのシャツが、ボンドというキャラクターのスタイルにも選ばれていたことは、このブランドの持つ独特な立ち位置を象徴しています。
SULKAは2002年に最後の店舗を閉じ、その長い歴史に一度幕を下ろしました。だからこそ、現在ヴィンテージとして残っているSULKAのシャツには、単なる古着以上の面白さがあります。
それは、現在も続いているブランドのアーカイブとは少し違い、すでに失われたメンズウェアの文化を、実際の服として感じることができるということ。
ニューヨークで生まれ、パリやロンドンへ進出し、世界中の一流の顧客に愛され、そしてイタリアで仕立てられた今回のシャツ。
派手なロゴや分かりやすいデザインではなく、服そのものの仕立てや素材、そしてその背景にある歴史を楽しむことのできる一着です。
今の時代の洋服にはない、少し余裕のあるシルエットと、古き良き紳士服の空気。
SULKAという、現在では失われてしまった名門の歴史を感じながら、現代のワードローブにも自然に取り入れていただきたいシャツです。
■size(cm)
表記サイズ:表記なし
肩幅47.5/身幅60.5/着丈81/袖丈61
■textile
Shell:Cotton100%
■model
■condition
タグ周りに黒ずみがございますが、着用時に目立つダメージはございません。
その他は画像をご確認下さいませ。
発送まで4日程度頂戴いたします。
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