ARNYS Forestière ― Appointment Only
"HERMÈS(エルメス)"が手掛けた、ダークインディゴのデニムトラウザーズ。
馬具工房を出発点とし、レザーグッズやシルク、プレタポルテへと領域を広げてきたHERMÈS。その服作りにおいて興味深いのは、日常着として広く定着したアイテムを扱う際にも、単に既存の形式をなぞるのではなく、素材や縫製、細部の仕上げによって独自の完成度へと引き上げている点です。
本品のベースとなっているのは、いわゆる5ポケットジーンズ。左右のフロントポケット、コインポケット、左右のバックポケットという非常にオーソドックスな構成を採用しており、形だけを見ればアメリカンデニムの文脈にある一本です。一方で、実物を細かく見ていくと、HERMÈSらしい要素が随所に差し込まれています。
まず印象的なのがデニムそのもの。色味は黒に近いほど深く残ったダークインディゴ。一般的なブルージーンズに見られる鮮やかな青とは異なり、表面にはややグレーを含んだような落ち着いた発色があります。生地の綾目は細かく、粗野なワークウェアというよりも、スラックスに近い端正な印象を受けるデニムです。
シルエットは股上をある程度確保し、腰回りから裾まで大きく絞り込まずに落としたストレート。細身のデニムとは明確に異なり、腿から膝、裾にかけて十分な幅があります。しかし、極端なワイドシルエットでもありません。5ポケットジーンズ本来の簡潔な構造を残しながら、脚のラインを拾いすぎないバランスに整えられています。
フロントはジッパーフライ仕様。トップボタンには"HERMÈS PARIS"の刻印が入る銀セリエのボタンを使用。外から見れば非常にシンプルなデニムでありながら、実際に手に取った際にブランドを認識できるような控えめな作りです。
さらに面白いのがステッチの使い分け。表側ではデニムの色に馴染むダークブラウン系の糸を主体とし、ステッチ自体が必要以上に目立たないようまとめられています。それに対してウエスト内側には鮮やかなオレンジの糸を使用。フロントを開いた際にだけ現れるこの色が、濃紺のデニムに対して鮮明なコントラストを作っています。
ウエスト内側にはブラウンレザーのブランドパッチを配置。パンチングによって"HERMÈS"の文字を表現したもので、大きなロゴをプリントするのではなく、革そのものの質感を残した仕上げです。レザーを得意としてきたHERMÈSらしさを、デニムの内側という目立たない場所に落とし込んだディテールと言えます。
バックスタイルも簡潔です。左右に配されたパッチポケットは、過度なステッチ装飾や刺繍を持たないプレーンな形状。バックヨークからポケット、脇線まで、デニムの基本的な構成を崩していません。ブランドを強調する革パッチを腰の外側に大きく取り付けることもなく、背面から見た印象は驚くほど匿名的です。
HERMÈSという名前から連想される華美な装飾を加えるのではなく、5ポケットという完成された衣服の形式を尊重し、その中で素材、金属パーツ、革、ステッチといった細かな部分を整えていく。結果として、遠目には何の変哲もないダークインディゴデニムでありながら、近くで見るほど作りの違いが見えてきます。
また、現代のデザイナーズブランドによるデニムでは、加工や極端なシルエットによって特徴を打ち出すものも少なくありません。それに対してこちらは、デニムという素材自体の表情と5ポケットの普遍的な形を主役に据えています。
ジャケットやシャツ、上質なニットと合わせても違和感がなく、逆にスウェットやレザージャケットと組み合わせれば、通常のジーンズと同じ感覚で使える。その振り幅の広さも、この一本の良いところです。
HERMÈSであることを前面に押し出したデニムではありません。むしろ、日常着として最も普遍的なジーンズをHERMÈSが作るとどうなるのか。その答えが、深いインディゴの色合い、端正なストレートシルエット、HERMÈS PARISの刻印を持つメタルパーツ、内側に忍ばせたオレンジステッチ、そしてブラウンレザーのブランドパッチといった細部に現れています。
デニムらしい気軽さを保ちながら、作りを見る楽しさもしっかりと残された一本です。
■size(cm)
表記サイズ:46
ウエスト96/裾幅22.5/股上26/股下73/総丈99
■textile
Shell:Cotton100%
■model
■condition
綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。
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