ARNYS Forestière ― Appointment Only
"HERMÈS(エルメス)"のカレの中でも、馬具や騎馬、航海といったメゾンを象徴するモチーフとは少し異なり、自然そのものを主役に据えた一枚。
Christiane Vauzellesが手掛けた"Tourbillons"です。
Vauzellesによるこの図案が最初に発表されたのは1968年。のちに複数回再版されており、1990年代にも再び製作されています。
フランス語の"Tourbillon"は、渦や旋回を意味する言葉。その名の通り、描かれているのは風に舞い、地面へと降り積もっていく無数の落ち葉です。一見するとさまざまな種類の葉を整然と並べた植物図鑑のようにも見えますが、全体を眺めるとその配置は決して均一ではありません。外側には比較的大きな葉を置き、中央へ向かうにつれて徐々に小さな葉が増えていく構成。葉の向きも一定ではなく、右へ左へと回転するように配置されています。中心部には細かな葉が円を描くように集まり、まるで風によって落ち葉が巻き上げられ、小さな渦を作っている瞬間を真上から捉えたようです。"Tourbillons"という名前が、図案全体を見たときに初めて腑に落ちます。
本品で特に印象的なのが、その色使い。
ベースとなるのはほとんど黒に近い深い色。そこへイエロー、ゴールド、オーカー、ブラウン、ダークブラウンといった秋の植物を思わせる色調のみで葉を描いています。鮮やかな多色使いを得意とするエルメスのカレにあって、これほど色域を絞った構成は非常に印象的です。
ただし、単純な二色刷りのような平面的なものではありません。一枚一枚の葉を近くで見ると、葉脈、虫食いの跡、斑点、枯れて色が抜けた部分まで細かく描き分けられています。同じ黄色でも明るいレモンイエローに近いものから黄土色まで、ブラウンにも赤みや深さの異なる複数の表情があり、それらが黒い背景の上で浮かび上がります。新品の葉を理想化して描くのではなく、枯れ、変色し、傷み、穴の開いた葉まで図案として取り込んでいるところも面白い部分。植物を装飾的なモチーフとして単純化するのではなく、それぞれ異なる形や状態を持った自然物として観察し、その違いそのものを柄へ変換しています。
それでいて写実一辺倒にならず、離れて見ると一枚のグラフィックとして成立している。エルメスのスカーフにおける図案設計の巧さがよく分かる一枚です。
生地はエルメスのカレらしいシルクツイル。斜め方向に細かな畝を持つ綾織りによって、薄手でありながら適度な張りがあり、平面に広げた際には図案が鮮明に現れます。一方で首元へ巻けば柔らかくドレープし、折り重なった部分ではシルク特有の光沢が色の濃淡をさらに強調します。
この柄では、その折ったときの見え方が特に優秀です。90cm角を全面で見ると植物標本のように膨大な種類の葉が広がりますが、三角に折れば黒を基調に数枚の黄金色の葉だけが現れ、さらに細く畳めばブラウンやイエローが断片的に覗く。結び方によって柄が大きく変化するため、全面を見せる状態と実際に身に着けた状態とで、まったく異なる表情を楽しめます。
ブラックを基調としていることもあり、一般的な華やかなカレに比べて洋服へ取り入れやすいのも魅力です。首元へ巻くことはもちろん、ジャケットやコートの襟元から少量だけ覗かせても良いですし、バッグへ結んでも柄が綺麗に残ります。
1968年に生まれた図案でありながら、古典的な装飾性に寄り過ぎず、現在見ても非常にモダン。
エルメスのカレには数多くの図案がありますが、"Tourbillons"は自然の一瞬の動きを、90cm四方のシルクの中へ非常に巧みに閉じ込めたデザインと言えるでしょう。
黒い地面の上を舞う、黄金色に変化した無数の葉。
一枚ずつを眺めても、全体を広げても、そして実際に巻いても成立する。
エルメスのシルクプリントの魅力を存分に楽しめるヴィンテージ・カレです。
■size(cm)
表記サイズ:90
■textile
Shell:Silk100%
■model
■condition
※箱は付属致しません。
綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。
発送まで4日程度頂戴いたします。
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