ARNYS Forestière ― Appointment Only
1999年春夏、Moreno Ferrari(モレノ・フェラーリ)がデザインを手掛けていた時期の"C.P. COMPANY(シーピー・カンパニー)"。
一見するとリネンのミリタリージャケットですが、この一着の面白さは、まず生地にあります。
使用されているのは、ブランドが"LINO-FLAX"と呼ぶリネンをベースとしたファブリック。リネン本来の乾いた繊維感を残しながら、その表面にポリウレタンによるコーティングを施した、C.P. COMPANYらしい加工素材です。
天然繊維と化学的な加工という、性格の異なる二つの要素をひとつの生地の中で共存させています。
新品時にはコーティングによる独特の光沢と硬さがあり、それが着用や時間の経過によって少しずつ落ち着き、皺の山や縫い目、擦れやすい部分から表情が変わっていく。均一なグレーではなく、光を受ける部分は鈍く白っぽく、皺の谷には濃色が残り、金属の表面が酸化したような濃淡が生まれています。細かな縦横の繊維はリネンそのものですが、その上に薄い膜を一枚重ねることで、通常のリネンとはまったく異なる質感に仕上げられています。
C.P. COMPANYがこれまで使用してきた数多くの生地の中でも、個人的に経年変化がとりわけ良いと感じる素材のひとつです。
デザインの基礎となっているのは、フィールドジャケットやサファリジャケットに見られる実用服の構造。フロントには左右対称に大型のフラップポケットを配置。単純なパッチポケットではなく容量を持たせた立体的な設計となっており、胸元を横切る切り替え線と合わせて、前身頃に明確な構造を作っています。
一方、フロントのボタンは比翼によって隠されるフライフロント仕様。ポケットには強いミリタリーの要素を残しながら、中央からボタンという視覚的な情報を取り除くことで、正面から見た印象は意外なほど整理されています。
襟も特徴的です。シャツカラーを基礎としながら、やや大きく取られた襟先には丸みがあり、軍物そのものの硬さを感じさせません。肩にはエポレットを思わせる切り替えが走りますが、装飾を過剰に加えるのではなく、ステッチと生地の重なりによって構造を見せています。
袖口には同じくC.P. COMPANY刻印入りのメタルボタン。フロントボタンも含め、光沢を抑えた金属の質感が、経年したLINO-FLAXの表面とよく馴染んでいます。
さらに袖付近にはアイレットによるベンチレーションを配置。こうした一見すると些細な仕様にも、単なるミリタリーデザインの引用ではなく、「衣服を道具として考える」という当時のC.P. COMPANYらしさが表れています。
内側を見ると、この服の構造がさらに分かりやすいです。身頃には表地とは異なるダークカラーのコットン系ファブリックを組み合わせ、内ポケットを配置。その一角には、人物のグラフィックとともに大きく"C.P. COMPANY"とプリントされています。
外側にはほとんどブランドを主張する要素がない一方、着用者だけが目にする内側にこうしたグラフィックを置く。このバランスも非常に良いところです。
1990年代後半のC.P. COMPANYを考えるうえで欠かせないのが、Moreno Ferrariの存在です。
創業者Massimo Ostiが築いた、軍服・ワークウェア・スポーツウェアを研究し、素材開発と染色技術によって現代の衣服へ再構築する方法論。その後を引き継いだFerrariは、単にOsti期の意匠を反復するのではなく、身体と衣服、そして機能との関係をより実験的に掘り下げていきました。特に1990年代後半から2000年代初頭には、天然素材に樹脂やフィルム、コーティングなどの工業的な処理を掛け合わせたファブリックが数多く登場します。
このLINO-FLAXも、その流れの中で見ると非常にC.P. COMPANYらしい素材です。
リネンという極めて古典的な天然繊維に、ポリウレタンという現代的な加工を重ねる。
リネンは皺になることを避けるのではなく、その皺そのものを表情として受け入れる素材です。一方でコーティングは表面を覆い、均質化しようとする加工でもあります。
その二つを重ねることで、着用によって内部のリネンが動き、外側の膜にも変化が生まれる。
つまり完成した瞬間が最も美しい生地ではなく、使うことで完成度が増していく素材と言えます。
グレーとブラウンの中間のような複雑な色調に、部分ごとに異なる光沢。胸や袖、背中には自然な皺が刻まれ、ステッチ周辺には濃淡が現れています。それでいて生地そのものの細かな織りは残っているため、単なる樹脂加工のテクニカルファブリックとも違います。
シルエットは適度に身幅を取りながら、着丈を抑えたジャケット型。大型ポケットによって前身頃にはボリュームがありますが、生地自体が比較的軽いため、着用すると必要以上に膨らまず身体に馴染みます。シャツやカットソーの上から軽く羽織るだけでも成立し、コーティングリネン特有の皺が立体感を作ってくれます。
90年代後半、Moreno Ferrari期のC.P. COMPANYらしい実験的な素材開発と、ミリタリーウェアを基礎とした機能的なパターン。その両方を楽しめる一着です。
■size(cm)
表記サイズ:表記なし
肩幅49.5/身幅57/着丈67/袖丈67
■textile
Shell:Linen (Polyurethane Coated)
■model
■condition
とても綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。
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