ARNYS Forestière ― Appointment Only
"HERMÈS(エルメス)"を象徴するプロダクトのひとつ、"Carré(カレ)"。
フランス語で「正方形」を意味するその名の通り、1937年に誕生したシルクスカーフは、単なる服飾小物という枠を越え、エルメスが長い年月をかけて築き上げてきた色彩、プリント、そして物語性を一枚の正方形の中に凝縮した存在です。
今回ご紹介するのは、約90cm四方の最も象徴的なサイズである"Carré 90"。
作品名は"Harnais de Cour(宮廷の馬具)"。
デザインを手掛けたのは、エルメスのカレを語る上で欠かすことのできないアーティスト、Robert Dumasと並ぶ馬具図案の名手として知られるPhilippe Ledoux(フィリップ・ルドゥー)。
本品にも"LEDOUX"のサインを確認することができます。
"Harnais"はフランス語で馬具やハーネス、"Cour"は宮廷を意味する言葉。
つまり本作で描かれているのは、実用一辺倒の馬具ではなく、王侯貴族のために仕立てられたような、極めて装飾性の高い「宮廷の馬具」です。
エルメスは1837年、Thierry Hermès(ティエリ・エルメス)がパリで馬具工房を開いたことからその歴史を始めました。現在ではバッグやレザーグッズ、ウェア、ジュエリーなど幅広いカテゴリーを擁するメゾンとなりましたが、その原点にあるのはあくまで馬と人を結ぶ馬具製作。その意味で"Harnais de Cour"は、エルメスのルーツそのものを一枚のシルクへ落とし込んだ作品と言えるでしょう。
画面いっぱいに描かれるのは、鞍、鐙、轡、手綱、革帯、金具、房飾りなどから構成される華麗な馬具。しかし、それらは単なる道具として描写されているわけではありません。
ゴールドを基調とした金具には紋章や植物を思わせる細密な装飾が施され、ブルーのクッションや房飾り、編み込まれたコードが組み合わされることで、馬具という実用品がひとつの装飾美術へと昇華されています。
特に目を惹くのが、上下に大きく配置された二組の馬具。淡いブルーのクッションを中心に、ゴールドのストラップや金具が複雑に交差し、その周囲を手綱やコードが流れるように巡っています。
一見すると左右対称にも思える構成ですが、細部を追っていくとそれぞれの馬具の形状や装飾は異なり、視線を移すたびに新しいディテールが現れます。
さらに中央には、馬の頭部を飾る装具や手綱、紋章入りのパーツが大胆に配置されています。
直線的な革帯と、曲線を描く手綱。
硬質な金属装飾と、柔らかな房や編み紐。
異なる質感を持つものが複雑に交差しながらも、全体として破綻することなく一枚の構図へ収まっている点は、Ledouxの優れた描写力を感じさせます。
四隅に置かれた紋章も、このカレを特徴付ける重要な要素です。ライオンや王冠、盾、植物装飾などを組み合わせた紋章が、それぞれ異なる意匠で描き込まれています。
中央に集約された馬具の世界を四隅の紋章が囲うことで、単なる馬具の図鑑ではなく、宮廷文化を思わせる格調のある画面構成へと仕上げられています。
そして下部には"HARNAIS DE COUR"のタイトル、その近くには"HERMÈS PARIS"の表記。
エルメスが馬具工房として歩み始めた歴史と、カレという20世紀を代表するシルクプロダクトが、一枚の中で自然につながっています。
本品で特に素晴らしいのが、そのカラーリング。ベースとなるのは、わずかに青みを含んだ淡いペールブルー。中央には柔らかなアイボリーを置き、そこへアンティークゴールドを思わせる黄褐色の馬具を重ねています。ゴールドとホワイトというクラシックな組み合わせにブルーを加えることで、宮廷的なモチーフでありながら重々しさを感じさせません。むしろ非常に軽やかで、清涼感のある印象です。
近くで見ると、ゴールド部分も単一色ではありません。細かな濃淡によって金属の立体感や経年したような陰影まで描き分けられており、金具の丸みや彫刻、革の厚みまで感じられるほど。そこへ淡いブルーのグラデーションが重なることで、平面的なプリントでありながら奥行きが生まれています。
約90cm四方という大きな画面で見れば、馬具を主題とした古典的な装飾画。
しかし、カレの魅力は広げた状態だけでは完結しません。
首元に巻けばゴールドの馬具は細かな幾何学模様のように分解され、その間からペールブルーとアイボリーが覗きます。三角に折れば外周のブルーが強く現れ、細く畳めばゴールドのストラップや金具だけが連続して見える。広げた状態では極めて具体的な「馬具」であるものが、折り畳むことで抽象的な柄へ変化していく。この変化こそ、エルメスのカレを身につける面白さのひとつです。
素材はシルク。カレに用いられるシルクツイルは、滑らかさだけではなく適度な厚みとハリを備えており、細密なプリントを鮮明に受け止めながら、巻いた際には美しい立体感を生み出します。細かな斜めの織り目は、シルクツイルならでは。光の当たり方によってペールブルーが僅かに明暗を変え、ゴールドにも柔らかな艶が現れます。
また、縁にはエルメスのカレらしいロール状の仕上げ。プリントだけではなく、一枚の布としての完成度まで徹底して作り込まれていることが分かります。
1837年に馬具工房として始まった"HERMÈS"。
その原点である馬具を、約90cm四方のシルクというキャンバスの中へこれほど華麗に展開した"Harnais de Cour"。
エルメスの歴史、職人技、色彩、そしてカレというプロダクトの魅力が自然に重なった、まさにメゾンらしいCarré 90です。
■size(cm)
表記サイズ:90
■textile
Shell:Silk100%
■model
■condition
使用感がございます。
その他は画像をご確認下さいませ。
発送まで4日程度頂戴いたします。
【必ずオンラインサイト下部の特定商取引法に基づく表記をお読みになってからご購入ください。】
※神経質な方のご購入はご遠慮ください。
※NCNR、ビンテージやアンティークにご理解のある方のみご購入下さい。
新商品やキャンペーンなどの最新情報をお届けいたします。