ARNYS Forestière ― Appointment Only
フランス・パリ左岸を象徴するメゾンのひとつ、"ARNYS(アルニス)"によるシルクジャケット。
1933年、パリ7区のRue de Sèvresに創業したARNYSは、既製服でありながらビスポークに近い感覚を持ち、英国的なテーラリングとも、イタリア的な軽快さとも異なる独自のメンズウェアを築いたことで知られています。ブランドを代表する"Forestière(フォレスティエール)"をはじめ、ARNYSの洋服には一般的なテーラードウェアの定型から少し距離を置いたものが多く見られます。身体を過度に構築するのではなく、素材や色彩、ポケットの配置、襟の形といったディテールによって個性を与える。その少し風変わりでありながら品位を失わないバランスこそ、ARNYSの大きな魅力です。
こちらも、そうしたARNYSらしさが非常によく表れた一着。
まず目を惹くのは、エメラルドグリーンを淡くしたような独特のカラーリングです。ブルーともグリーンとも一言では表現しにくく、光の当たり方によって青みが強く見えたり、柔らかな緑が前に出たりと、微妙に表情を変えていきます。
そして、その色彩をより印象的に見せているのがシルクの生地。シルク特有の細かな光沢がありながら、ドレスウェアのような強い艶ではありません。生地表面には繊細な陰影が生まれ、皺やドレープのひとつひとつまで光を拾います。平面的に色が見えるのではなく、光を受けた部分と影になる部分で濃淡が生まれる生地です。
特にこのエメラルドグリーンとの相性が素晴らしく、鮮やかな色を使いながらも派手さだけが先行しません。色彩に奥行きがあり、ARNYSが得意とした少し褪せたようなフレンチカラーとして成立しています。
形は5つボタンのシャツジャケットに近い軽快な構成。一般的なテーラードジャケットに見られるラペルを設けず、シャツカラーをそのままジャケットへ落とし込んだようなデザインです。
この襟にもARNYSらしい特徴があります。襟腰から襟先までを低く寝かせる一般的なシャツカラーとは異なり、首元からやや立ち上がるように形成された独特のバランス。第一ボタンを外して着用すると襟が自然に外側へ開きますが、完全に寝てしまうのではなく、首元に立体感を残します。ARNYSのジャケットやシャツでは時折見ることのできる特徴的な襟型で、テーラードジャケットほど構築的ではなく、通常のシャツよりも存在感がある。その中間に位置するようなデザインです。
インナーにシャツを合わせても良いですし、カットソーの上から軽く羽織った際にも襟が自然に形を作ってくれます。
フロントには"ARNYS PARIS"の刻印が入ったボタンを配置。ボタン自体はボディと同系色ではなく、アイボリーからベージュに近い柔らかな色を選ぶことで、エメラルドグリーンの生地に小さなアクセントを加えています。
さらに特徴的なのがフロントポケット。片側にはチェンジポケットを配置した二つのフラップポケット、反対側には一つのフラップポケットを配したアシンメトリーな構成となっています。
テーラードジャケットの腰ポケットを思わせる意匠でありながら、配置を左右均等にしないことで、ARNYSらしい少し捻りのある表情に仕上げています。
装飾のためだけに奇抜なディテールを加えるのではなく、一見すると端正で、よく見ると通常のジャケットとは何かが違う。この匙加減はARNYSの洋服を見ていて面白い部分です。
そして、本品の魅力は表側だけではありません。内側を見ると、背裏には細かな格子柄を織り出したコットンのシャツ生地が使用されています。全面に裏地を付けるのではなく、背抜きの軽量な構造とすることで、シルクという素材の軽さや柔らかさを損なわない仕立て。裏側の縫い代にも同じチェック生地によるパイピングが施されており、表からはほとんど見えない場所にまで手が入っています。無地の裏地を貼って内部を覆ってしまうのではなく、シャツに用いるような軽いコットン生地を部分的に使うことで、ジャケット全体を軽快に仕立てているのが特徴です。
表地のシルクと裏側の細かなチェックという組み合わせも非常にARNYSらしいもの。ジャケットを脱いだ時や、フロントを開いて着用した際にだけ僅かに覗く程度ですが、エメラルドグリーンの華やかな表地に対して、白地をベースとした細かな格子柄が良いコントラストになっています。
バックスタイルも特徴的です。背中心には縦方向のシームを走らせ、腰位置にはボタン留めのバックベルトを配置。その下からセンターベントへと繋がります。正面から見るとシャツジャケットのように軽やかですが、後ろ姿にはクラシックなサファリジャケットやスポーツジャケットを思わせる要素が残されています。
シャツ、テーラード、サファリといった異なる衣服の要素を混ぜながら、一つのカテゴリーに明確に収めない。この曖昧さも本品の面白さでしょう。
何より、この一着を特別なものにしているのは、やはりシルクとエメラルドグリーンの組み合わせです。ARNYSではウールやコットン、リネン、カシミヤなど様々な天然素材を用いた洋服が存在しますが、シルクはその中でも色彩の魅力を最も直接的に楽しめる素材のひとつ。強い日差しの下では青緑の色彩が鮮明になり、室内や夕方には少しグレーを含んだ落ち着いたトーンへ変化する。天然繊維ならではの不均一な光沢が、その色の変化をさらに豊かにしています。
シルクという言葉から想像するフォーマルな印象とは対照的に、仕立てそのものは非常にリラックスしています。芯地や厚い裏地によって形を固定するジャケットではなく、シャツの延長として羽織ることのできる軽さがあり、着用すると生地が身体に沿って自然に落ちます。そこへシルク特有のドレープが加わることで、平置きした状態以上に柔らかなシルエットが生まれます。
春先にはシャツや薄手のニットの上から、夏にはカットソーの上へ直接羽織り、秋口にはトラウザーズと合わせる。
ジャケットでありながら堅苦しくなく、それでいてシャツ一枚より明確に装いが完成する一着です。
エメラルドグリーンのシルク、立ち上がるような独特の襟、左右非対称に配置されたフラップポケット、シャツ生地を用いた背抜きの裏仕様、細かなパイピング、そしてバックベルト。
一つひとつを見ればクラシックな洋服に存在する要素ですが、その組み合わせ方にはARNYS以外ではなかなか見ることのできない個性があります。
シルクの美しい発色と軽やかな仕立てを、日常着として楽しんでいただきたいスペシャルピースです。
■size(cm)
表記サイズ:50
肩幅48.5/身幅59/着丈77/袖丈61
■textile
Shell:Silk100%
Lining:Cotton100%
■model
■condition
全体的にシミ等の着用感がございます。
左袖付近にダメージがございます。
その他は画像をご確認下さいませ。
発送まで4日程度頂戴いたします。
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