ARNYS Forestière ― Appointment Only
1961年、20世紀のファッション史を語る上で欠かすことのできない一人のデザイナー、イヴ・サン=ローランは、自身の名を冠したメゾン"Yves Saint Laurent"を設立しました。
しかし、その歴史はブランド創設以前から始まっています。
1936年、フランス領アルジェリア・オランで生まれたイヴ・サンローランは、幼少期から衣服や舞台衣装のデザインに強い関心を抱き、17歳でパリへ渡ります。名門ファッションスクールで才能を認められた彼は、わずか19歳でChristian Diorへ入社。当時ディオール本人から最も期待された若き才能として頭角を現しました。
1957年、クリスチャン・ディオールが急逝すると、21歳という若さでメゾンのアーティスティック・ディレクターへ就任します。
翌1958年に発表した"トラペーズライン"は世界的な成功を収め、ファッション界は新たな天才の誕生を確信しました。
しかし、その後の兵役問題や経営陣との対立を経てディオールを退社。
1961年、実業家ピエール・ベルジェと共に"Yves Saint Laurent"を創設します。
この決断は、単なる独立ではありませんでした。
オートクチュールを特別な一部の人々だけのものではなく、現代を生きる人々の日常へ落とし込むという、新しいラグジュアリーの始まりでもありました。
1966年には世界初の本格的ラグジュアリープレタポルテブティック"Saint Laurent Rive Gauche"をオープン。それまでオートクチュール中心だった高級メゾンにおいて、既製服へ本格参入したこの出来事は、現在のラグジュアリーブランドの在り方を決定付けた歴史的な転換点として知られています。
イヴ・サンローランは女性服において、タキシードスーツ"Le Smoking"、サファリジャケット、パンツスタイルなど、それまで男性だけのものとされてきた要素を女性へ取り入れ、新しい美しさを提案しました。
一方でメンズラインにおいても、その哲学は一貫しています。
装飾ではなく色彩。
奇抜さではなく配色。
派手なシルエットではなく、計算されたパターン。
決して大声で主張しないのに、圧倒的な存在感を持つ服。
1970〜90年代に製作された"YVES SAINT LAURENT pour homme"は、そのコンセプトを忠実に体現したコレクションと言えるでしょう。
現在ではアンソニー・ヴァカレロ率いるSaint Laurentがシャープでロックなイメージを打ち出していますが、その源流にあるのは、イヴ本人が築き上げた美しい色彩感覚とエレガンスです。
こちらは1990年代頃に製作された"YVES SAINT LAURENT pour homme"のドレスシャツ。
一見するとクラシックなストライプシャツですが、近づくほどに、このブランドならではの美意識が随所に現れています。
まず目を惹くのは、この配色。ベースには深みのあるチャコールブラックを採用し、その上にワインレッド、マゼンタ、淡いピンク、ホワイトの細かなストライプを規則正しく配置しています。赤系統だけで構成するのではなく、淡いグレイッシュピンクを挟み込むことで色同士が柔らかく馴染み、決して派手になり過ぎない絶妙なバランスを実現しています。ブラックベースでありながら重く見えず、ボルドーだけでは生まれない奥行きを感じさせる色彩設計。これはイヴ・サンローランが生涯を通じて得意としてきた、色彩を重ねることで生まれる洗練された美しさを彷彿とさせます。
ストライプ自体も非常に繊細です。均一な幅ではなく、細いラインを複数本組み合わせることで一本のストライプを構成しており、遠目には落ち着いた印象、近づくと豊かな表情を見せます。派手な柄ではなく、織りと色だけで存在感を作り出す、まさに90年代YVES SAINT LAURENTらしいデザインです。
素材には滑らかなコットン生地を採用。
高密度に織られた生地は適度なハリを備えながらも、肌当たりは非常にしなやか。光を受けると控えめな艶が生まれ、ストライプの色味がさらに立体的に浮かび上がります。着用を繰り返すことでコットン特有の柔らかさが増しながらも、生地の密度によって型崩れしにくく、美しいシルエットを長く維持してくれる素材です。
シルエットは当時らしいクラシックフィット。極端に細くも大きくもなく、身体との間に程よい空間を持たせることで、ジャケットのインナーとしても、一枚着としても美しく成立します。
裾は緩やかなラウンド仕様。タックインした際には自然に収まり、アウトで着用しても軽やかな印象を与えます。
背面にはヨークとセンタープリーツを備え、肩周りの可動域を確保。
ドレスシャツとしての端正な見た目を保ちながら、日常での着心地にも十分配慮されています。
襟はクセのないレギュラーカラー。
程よく開いた襟先はネクタイとの相性も良く、第一ボタンを外せばリラックスした雰囲気へと変化します。ビジネスライクになり過ぎず、ファッションとしても楽しめる絶妙な設計です。
シンプルなシェルボタンを採用。あくまで主役は生地であるという思想が感じられ、装飾を最小限に抑えることでストライプの美しさを引き立てています。
左胸には"YSL"モノグラムの刺繍。ボディと同系色のワインカラーで丁寧に施されており、離れて見るとほとんど目立ちません。近づいた時だけブランドを認識できる、この控えめな意匠もまた90年代YVES SAINT LAURENTらしい魅力です。
ブラックスラックスと合わせればドレスライクに。ライトグレーのウールパンツでは色彩がより際立ち、デニムと合わせれば程よくカジュアルダウンしたスタイルも楽しめます。
秋冬はテーラードジャケットやレザーのインナーとして、春には一枚で。
シーズンを問わず着用できる高い汎用性も、このシャツの魅力です。
イヴ・サンローランという一人のデザイナーが築き上げた色彩感覚とエレガンス。
それを過度な装飾ではなく、一本一本のストライプと丁寧な仕立てによって表現した1990年代の"YVES SAINT LAURENT pour homme"。
華美ではなく、それでいて確かな存在感を放つ、メゾンの美学を静かに物語る一着です。
■size(cm)
表記サイズ:M
肩幅46/身幅56/着丈75/袖丈67
■textile
Shell:Cotton60% Polyester40%
■model
■condition
綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。
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