ARNYS Forestière ― Appointment Only
ヴィンテージ市場においてフランスやドイツのワークウェアは広く知られていますが、ベルギーの古い衣服は現存数そのものが少なく、体系的に語られる機会も多くありません。
しかしベルギーは古くからヨーロッパ有数の繊維産業国として発展し、フランス、ドイツ、オランダそれぞれの文化が交差する独自の服飾文化を育んできました。
そのためベルギー製の古い衣服には、フランス的な洗練とドイツ的な実用性が共存する独特の魅力があります。
こちらは1930〜40年代頃に製造されたと考えられるダブルブレストジャケット。
便宜上ベルギアンワークとして分類されることもありますが、その佇まいを見る限り、純粋な労働着というよりも、当時のリゾートウェアやレジャージャケット、あるいは外出着として着用されていた可能性を感じさせる個体です。
年代を考慮すると驚くほど洗練されたプロポーションを持ち、現代の視点から見ても非常に完成度の高い一着と言えるでしょう。
このジャケットを目にしてまず感じるのは、古いヨーロッパ衣料特有の品の良さです。
同年代のフレンチワークジャケットであれば、より実用性を優先した大ぶりなシルエットが多く見られます。
一方でドイツのワークウェアには、機能性を重視した直線的で重厚な作りが少なくありません。
しかしこちらはそのどちらにも属しません。
肩の収まり。
身頃の分量。
襟の形状。
ダブルブレストの配置。
すべてが非常に均整の取れたバランスで構成されています。
ワークウェアの延長線上にありながら、明らかに「見せる服」としての意識が感じられるのです。
1930〜40年代のヨーロッパでは、海辺の保養地や避暑地で着用されるサマージャケットやスポーツジャケットが発展していました。
こちらもそうした余暇のための衣服と共通する要素を多く備えています。
軽快なストライプ。
爽やかな配色。
柔らかなダブルブレスト。
どこかリラックスした空気を持ちながらも、決して砕けすぎない。
現代のリゾートウェアが目指しているバランスを、約90年前の衣服が既に体現していたことに驚かされます。
使用されているのはグレーと生成りによるストライプコットン。
ヴィンテージ市場ではブルー系のストライプパターンが圧倒的多数を占めるため、この色味自体が非常に希少です。
また、この年代のストライプ生地は現代の均一な量産生地とは異なり、織りによる豊かな表情を持っています。
近くで見ると糸の不均一さや天然素材ならではの凹凸が確認でき、生地そのものに立体感があります。
ストライプの幅も絶妙です。
主張しすぎず、それでいて確かな存在感がある。
無地では得られない奥行きを生み出しながら、決して派手には見えません。
さらに長い年月を経たことで生地は適度に柔らかくなり、身体に沿うような自然なドレープを形成します。
古いコットン特有の風合いが存分に楽しめるファブリックです。
このジャケット最大の見どころの一つが、古い年代ならではのパターン設計。
特に注目したいのは肩周りの構造。
現代衣料の多くは肩線が肩の頂点付近を通りますが、こちらは肩線が後身頃側へ大きく移動しています。
1930〜40年代以前のヨーロッパ衣料で時折見られる古い構造です。
この設計によって肩の可動域が確保されるだけでなく、着用時に前身頃へ余計なシワが入りにくくなります。
実際に前から見ると胸元から裾にかけてのラインが非常に美しく見えます。
一見すると単純なジャケットですが、その裏側には高度な立体裁断が隠されているのです。
また全体のシルエットも秀逸です。
フレンチワークほど大きくなく、ドイツワークほど硬質でもない。
肩が自然に落ちながらも身頃が過度に広がらず、着用時には非常に整ったシルエットを描きます。
フロントは8ボタン仕様のダブルブレスト。
また胸ポケットと裾ポケットはシンプルなパッチポケット仕様。
装飾的な要素を最小限に抑えながら、実用性を確保しています。
そして何より魅力的なのがダブルブレストとストライプの組み合わせです。
同年代のヴィンテージ市場を見渡しても、この条件で出てくる個体は決して多くありません。
年代、生地、構造、シルエット。
その全てが高い水準でまとまっています。
約90年前の衣服でありながら、驚くほど現代的に着用できる点もこの個体の魅力です。
Tシャツの上から軽く羽織るだけでも成立しますし、シャツやスラックスと合わせれば上品なスタイルにも対応します。
デニムやミリタリーパンツとの相性も良く、コーディネートの幅は非常に広いと言えるでしょう。
特に春夏シーズンとの相性は抜群です。
ストライプの軽快な印象とコットン生地の通気性が相まって、重たさを感じさせません。
単なるヴィンテージではなく、現代の洋服として見ても完成度が高い。
それこそが本個体の価値でしょう。
ヴィンテージウェアには希少性だけで語られるものも少なくありません。
しかし本個体は希少性に加え、純粋な衣服としての完成度が非常に高い。
90年近い年月を経た現在でも、その魅力が失われていないことこそ、このジャケットが優れたプロダクトである何よりの証明です。
資料的価値と実用性を兼ね備えた、ベルギアンヴィンテージの中でも特に魅力的な一着と言えるでしょう。
■size(cm)
表記サイズ:表記なし
肩幅43/身幅49/着丈70.5/袖丈56.5
■textile
Shell:Cotton100%
■model
■condition
ヴィンテージながら綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。
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