ARNYS Forestière ― Appointment Only
フランスを代表するワークウェアメーカーの一つとして知られる"AU MOLINEL(オウ・モリネル)"。
19世紀後半から続く歴史を持ち、炭鉱労働者や工場労働者、鉄道関係者など、実際に働く人々へ向けた衣服を長年供給してきたメーカーです。
フレンチワークを語る上で欠かせない存在であり、Adolphe LafontやLe Mont Saint Michelと並び、現在ではヴィンテージ市場において高い評価を受けています。
同社の特徴は、過剰な装飾を排した合理的な設計と、優れた耐久性を持つ生地選定にあります。
労働着として生産された衣服でありながら、結果として生まれた均整の取れたバランスは、後年のファッションデザイナー達にも大きな影響を与えました。
近年ではフレンチワークをデザインソースとするラグジュアリーブランドも少なくありませんが、その原型を辿ると、こうした実用品に行き着きます。
こちらは1950年代頃に製造されたAU MOLINELの一着。
数あるフレンチワークジャケットの中でも比較的珍しいテーラード型のモデルです。
一般的なVポケット仕様のカバーオールとは異なり、テーラードジャケットの文法を取り入れながらワークウェアとして成立させた、非常に興味深い個体と言えるでしょう。
フレンチワークジャケットと聞くと、多くの方が丸襟のカバーオールを思い浮かべるかもしれません。
しかし本来のフランスの労働着には多様なバリエーションが存在しており、用途や職種によって細かな違いがありました。
こちらはその中でも比較的ドレス寄りの構造を持つ一着です。
ノッチドラペルを採用した3ボタン仕様。
フロントの見え方はテーラードジャケットそのものですが、縫製やポケット配置はあくまでワークウェアとして設計されています。
この絶妙な中間性こそが最大の魅力です。
スーツほど堅くなく、一般的なカバーオールほど無骨でもない。
フランスらしい洗練された感覚と実用品としての機能性が自然に共存しています。
使用されているのはフレンチワークを象徴するブルーコットンツイル。
ヴィンテージ市場では"インクブルー"や"フレンチブルー"と呼ばれることもある発色です。
現代の均一な染色とは異なり、経年によって徐々に色が抜けていくことで豊かな表情を生み出します。
こちらの個体も長い年月を経たことで独特の光沢感が現れており、単なる作業着の生地とは思えない奥行きを感じさせます。
また、この年代特有のツイルは高密度でありながらしなやかさを兼ね備えている点も特徴です。
着用を重ねることで身体に馴染み、生地全体に自然なドレープが生まれます。
デニムとも異なり、モールスキンほど重厚でもない。
その中間に位置する絶妙な素材感が魅力です。
ワークウェアとして必要十分な耐久性を確保しながら、日常着としても快適に着用できる。
当時のフランスの生地開発水準の高さを感じさせるファブリックと言えるでしょう。
特筆すべきはこの独特なシルエットです。
肩線は比較的外側に設定されており、全体的にゆとりを持たせた設計。
しかしウエストを過度に絞ることはなく、裾まで自然に落ちていくため非常に美しい縦のラインを形成しています。
現代のテーラードジャケットのような構築的な肩ではなく、ワークウェアらしい柔らかな肩周り。
また背面はセンターシームのみという非常に簡潔な構造。
余計な切り替えを排したことで、生地本来の質感や色味が際立っています。
服を複雑に見せるのではなく、必要な要素だけで成立させる。
フランスのワークウェアらしい合理性が感じられる設計です。
フロントは3ボタン仕様。
ボタン間隔は広めに設定されており、開けて着用した際も美しいラペルラインを形成します。
胸ポケットは角度を付けず水平に配置され、下部には大容量のパッチポケットを備えています。
いずれも労働着としての機能を優先した設計ですが、その配置バランスは極めて秀逸です。
特に下部ポケットの五角形に近い独特なフォルムはフレンチワークらしい特徴の一つ。
単なる四角形ではなく、補強と使いやすさを両立するための工夫が見て取れます。
さらにこの個体にはSANFOR表記のタグが確認できます。
SANFORIZED加工は洗濯後の縮みを抑えるための技術であり、当時としては先進的な仕様でした。
実用品として販売されていたからこそ採用されたディテールであり、華美な装飾とは異なる価値を感じさせます。
元々は労働着でありながら、その汎用性は非常に高いものがあります。
特に近年はフレンチワーク人気の高まりにより様々な復刻品やデザインソースの製品が登場していますが、本物のヴィンテージが持つ生地感や縫製、色の深みは再現が難しい部分でもあります。
さらにテーラード型となると市場で見かける機会は決して多くありません。
一般的な丸襟カバーオールと比較して生産数自体が少なく、現存数も限られています。
フレンチワークを既に所有している方が次の一着として探すケースも多く、コレクターから高い支持を集めるカテゴリーです。
当時の労働環境、生地産業、縫製技術、そしてフランス人の合理的な服作りが凝縮されたプロダクトたち。
その中でもこちらのAU MOLINEL製3Bジャケットは、ワークウェアとテーラードジャケットの境界線に位置する非常に興味深い一着と言えるでしょう。
美しいインクブルーのコットンツイル、
簡潔で完成度の高いパターン、
そして市場でも比較的珍しいテーラード型。
実用品として生まれながら、現代の目線で見ても十分に魅力的な造形を備えています。
フレンチワークの奥深さを知る方にこそ手に取っていただきたい、1950年代フランスの優れたプロダクトです。
■size(cm)
表記サイズ:60
肩幅56.5/身幅72/着丈76/袖丈67
■textile
Shell:Cotton100%
■model
■condition
綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。
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