ARNYS Forestière ― Appointment Only
2000年代以降のGiorgio Armani(ジョルジオ・アルマーニ)のクリエイションを語る上で欠かすことのできない要素の一つが、"仕立て"というクラシックな概念を、現代都市に適応する軽やかな機能服へと再構築した点にあります。
80年代に築き上げたアンコンジャケットによる革命以降、テーラリングの在り方そのものを書き換え続けてきました。
構築的でありながら柔らかく、エレガントでありながら実用的。
特に2000年代後半に入ると、よりテクニカルな方向へと進化していきます。
スポーツウェアやインダストリアルウェアに用いられる軽量素材を積極的に取り入れながらも、あくまで根底には"イタリア的な美しい仕立"”が存在する。
無機質な機能素材を、ラグジュアリーとして成立させる。
"EMPORIO ARMANI(エンポリオ・アルマーニ)"は、そんな時代の空気を色濃く映したラインでした。
本アイテムは、2008SSシーズンに製作されたテクニカルファブリックジャケット。
テーラードジャケットとスタンドカラーブルゾン、その二つの文脈を横断するような独特の構造を持った一着です。
まず目を引くのは、全体を覆う漆黒のテクニカルファブリック。
極めて滑らかな表面感を持ちながら、光を鈍く反射する控えめな艶があり、化学繊維特有のスポーティな印象を徹底的に削ぎ落としています。
一般的なナイロンジャケットに見られるようなアウトドア然とした表情ではなく、どこかドレスクロスにも近い静けさを感じさせる質感。
指先が滑るような高密度なタッチと、身体に沿って流れる柔らかな落ち感が共存しており、アルマーニらしい力みのないエレガンスが宿っています。
軽量でありながら適度なハリを備えているため、着用時には布地が身体から自然に浮き、美しいアウトラインを形成。
生地そのものがシルエットを構築するのではなく、空気を孕みながら輪郭を描くような独特の佇まいです。
ブラックという色彩も非常に美しい。
単なる黒ではなく、光の当たり方によって僅かにグラファイトのような陰影を感じさせる深いブラック。
都会の夜景や濡れたアスファルトを思わせるような、無機質で静かな色気があります。
シルエットは、アルマーニらしいリラックス感を持ちながらも、決してルーズには転ばない絶妙なバランス。
肩周りはナチュラルに落とされ、芯地による強い構築を排除。
一方で、縦方向へ流れるパターンメイクによって全体は非常にシャープに見えます。
特筆すべきは襟周りの構造でしょう。
通常時はラペルジャケットのように開いて着用可能ですが、内蔵されたストラップを留めることでスタンドカラーへと変化。
このギミックによって、一着の中に"ドレス"と"ギア"という相反する要素が共存しています。
襟を寝かせた状態では軽やかなイタリアンジャケットとして機能し、立ち襟にすることで一気に都市型アウターの表情へ変貌する。
しかもその変化が決して大袈裟ではない。
あくまで静かに、知的に変化する。
ここにアルマーニらしい美学があります。
さらに興味深いのは、左胸に配されたアシンメトリーなジップポケット。
止水仕様のミニマルなジッパーラインと、有機的なカッティングによって形成された胸部の切り替えが、このジャケットに独特の未来性を与えています。
単なるデザインアクセントではなく、人体の構造に沿うように湾曲したパターンワークによって、視線が自然に流れる設計。
テーラードの文脈にテクニカルウェアの機能意匠を融合させながら、過剰なスポーツ感へ陥らない絶妙な抑制が効いています。
2000年代当時、多くのブランドが"テック"を視覚的記号として誇張していた中で、アルマーニはあくまでラグジュアリーの言語でそれを表現していました。
このジャケットには、その成熟したアプローチが非常に色濃く現れています。
ポケット構造も非常に美しい。
腰部分にはフラップ付きポケットを配置しつつ、全体のボリュームを極力フラットに抑制。
ボタンもまた印象的で、鈍く光るマットな質感のものを採用。
過剰な主張を避けながら、工業製品的な静かな重厚感を与えています。
袖口は本切羽。
しかしながら、本一着ではその仕様は単なる縫製技術の誇示に留まらず、実用性に特化した結果的意匠。
汗ばむ季節にも対応する、袖のロールアップを叶える仕様です。
背面に目を向けると、センターを走る直線的なシームラインが際立ちます。
余計な装飾を排除しながら、一本の線だけで背中の美しさを成立させる。
この"引き算による造形"は、まさにアルマーニの真骨頂と言えるでしょう。
また脇下から背面へ流れる独特の切り替えも秀逸です。
可動域を確保する機能的意味を持ちながら、視覚的には身体を立体的に見せる役割を果たしている。
機能と造形が分離せず、一つのデザインとして統合されています。
このジャケットが美しい理由は、単にミニマルだからではありません。
クラシックなテーラリングを理解した上で、その形式を現代的な機能服へ翻訳しているからです。
スポーツウェアの快適性。
工業製品的な合理性。
そしてイタリアンテーラリングの流麗な色気。
それらがどれか一つに偏ることなく、極めて静かなバランスで共存している。
だからこそ、この服には時代性がありながら古びない魅力があります。
気温や環境に応じて襟の表情を変えながら、オンとオフ、ドレスとスポーツ、クラシックと機能性、その境界を曖昧に横断していく。
現代の日常に必要な機能を備えながら、決して"便利なだけ"で終わらない。
EMPORIO ARMANIというブランドが長年追求してきた、"知性ある男性の日常着"としての完成度を強く感じさせるプロダクトです。
流行を誇張することなく、静かに時代を映す服。
それこそがアルマーニの真価であり、この一着にも確かに宿っています。
■size(cm)
表記サイズ:52
肩幅47.5/身幅58/着丈73.5/袖丈61.5
■textile
Shell:Polyethylene88% Polyurethane12%
■model
■condition
とても綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。
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