1733年、イタリア北部ピエモンテ州にて創業した老舗ミル"PIACENZA(ピアチェンツァ)"は、世界で最も長い歴史を持つウール・カシミヤ専業メーカーの一つとして知られています。
創業からおよそ300年、同家による一族経営を一度も絶やすことなく、原毛の選定から紡績、染色、仕上げに至るまで一貫した品質哲学を守り続けてきました。
特にそのカシミヤは、イタリアの名門ブランドの多くが採用する"最高峰の原料"として知られ、繊維の細さ、油分の豊かさ、そして肌に触れた瞬間にわかる独特のぬめり感は、ピアチェンツァならではの絶対的な魅力です。

同社が高い評価を集める理由は、単に良質な素材を扱っているからではありません。
羊毛やカシミヤの個体差や産地ごとの特性を科学的に分析し、それぞれに最適な紡績・縮絨・仕上げを施すことで、他社では生み出せない"しなやかさと弾力の両立"を実現している点にあります。
糸の芯をしっかり残しながら、表層のみを柔らかく仕上げる技術は極めて高度で、着用を重ねてもヘタりにくい耐久性は、長年ニット愛好家を魅了し続けてきました。

本品は、そうしたピアチェンツァの哲学が最も色濃く感じられる、1990年代製のカシミヤVネックニットです。
まず目に入るのは、気品あるロイヤルブルーの発色。
単なる青ではなく、少しだけグレイッシュに沈む深みを持つため、派手さを抑えつつも、光が当たると内側から淡い艶がふわりと立ち上がる——まさに高級カシミヤ特有の美しさです。
色に芯があるぶん、ネイビーやグレー、ベージュなど、あらゆるボトムと自然に馴染み、ワードローブに一枚加えるだけで着こなしの幅が広がります。

シルエットは90年代らしい"少し肩が落ちる"リラックスしたバランス。
とはいえ野暮ったさはなく、肩から胸にかけての落ち方が非常に滑らかで、身体のラインを拾いすぎず、それでいて広がりすぎない絶妙な設計です。
裾と袖に配された太めのリブは、さりげなくシルエットを整え、全体の印象をすっきり見せる役割を果たしています。
Vネックの深さも中庸で、シャツを重ねても、一枚で着ても美しく成立する万能な深さです。

編地はミドルゲージ寄りのハイゲージ。
均一な針目が続き、まったくムラのない表情は、熟練した職人によるフルファッションならでは。
縫い代は丁寧にリンキングされており、肩のごろつきが少ないため、ジャケットやコートのインナーとしてもストレスがありません。
袖を通した瞬間にわかる"空気を含むような軽さ"と"体温を優しく包む暖かさ"は、ピアチェンツァ製のカシミヤにのみ宿る特別な体験です。

コンディションは良好。
年代相応のわずかな毛羽立ちはありますが、カシミヤの油分がしっかり残っているため、まだまだ美しい風合いをお楽しみいただけます。
むしろ、この時代特有の糸質の良さが熟れて生まれる"柔らかな膨らみ"は、現行品には見られない魅力ともいえます。

華美ではなく、控えめな品格。
気張らずに着られるのに、確かな格を感じるカシミヤ。
PIACENZAの歴史と技術が凝縮された一枚は、日常に寄り添いながら、確かな贅沢をそっと添えてくれる存在です。

■size(cm)
表記サイズ:50
肩幅51.5/身幅56/着丈61.5/袖丈62

■textile
Shell:Cashmere100%

■model

■condition
綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。

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