1921年、スコットランドのボーダーズ地方で創業した"BALLANTYNE(バランタイン)"は、世界に名だたるカシミヤ専業の名門です。
厳選した原毛の調達から紡績、染色、編立て、リンキングに至るまでの工程を緻密に管理し、長く着られる普遍のニットを作り続けてきました。
アーガイルやインターシャなどの高度な編み表現で名声を確立し、ラグジュアリーメゾンのOEMも担ってきたことでも知られます。
エルメスをはじめとする一流ブランドのニット生産を請け負ってきた背景は、品質基準の高さそのものと言えるでしょう。
流行の波に左右されない端正さ、そして袖を通した瞬間に感じる軽さと暖かさ。
バランタインは、英国圏の気候や文化から生まれた「デイリーにして贅沢なニット」の理想形を体現してきました。

本品は、1990年代当時の"LAMM St. Moritz"別注モデル。
スイス・サンモリッツに構える名門ブティック"LAMM"がバランタインに別注した希少なシリーズで、現在ではまず出会えない特別な一着です。
一般流通品とは色出しや素材選定の段階から異なり、上流階級の顧客が求めた"本当に良い日常着"として誂えられています。

素材はカシミヤ100%。
今回の個体を象徴するのは、LAMM別注ならではの柔らかなエクリュ。
白よりも柔らかく、ベージュよりも上品で透明感のある絶妙なトーンは、肌映りを美しく整えてくれる大人のニュアンスカラーです。
この色表現は当時のバランタインが持っていた染色技術の高さを実感できる部分でもあります。

シルエットは、90年代バランタインらしいクラシックな佇まい。
肩から袖にかけてのラインはなだらかで、身幅には程よいゆとりを確保。
リラックスしつつもだらしなく見えない、極めて優秀なバランスです。
クルーネックの開きは狭すぎず広すぎずの絶妙な設定で、シャツをレイヤードしても、一枚で着ても上品に収まります。
袖口と裾のリブはキックバックに優れ、品よくフィットする仕様。
90年代らしいやや長めのカフリブは、手首で自然に溜まり、美しい所作を引き立ててくれます。

編みはフルファッション、リンキングは極めてフラット。
コートの下に着てもごろつきがなく、軽い着心地はまさに名門カシミヤの真価です。
表面の起毛は控えめで、うっすらと光を拾う上品な艶が漂います。
"ふわふわに甘い"だけのカシミヤではなく、"長年使ってこそ深まる豊かさ"を宿した、正統派の風合いです。
コンディションも年代を考えると良好。
補修痕はありますが、着用に影響のあるダメージはなく、むしろヴィンテージの魅力として美しく落ち着いています。

名門同士の価値観が交差して生まれた、贅沢の原点のような一着。
何気ない日常をそっと上質に変えてくれる、ひとつの"完成形"と言えるニットです。

■size(cm)
表記サイズ:MEDIUM
肩幅56/身幅60.5/着丈71.5/袖丈63

■textile
Shell:Cashmere100%

■model

■condition
補修痕がございます。
その他は画像をご確認下さいませ。

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