ローデンコート(Loden Coat)は、オーストリア・チロル地方にルーツをもつ伝統的な防寒着で、その起源は中世にまで遡ります。
もともとはアルプスの農民や猟師が厳しい寒冷地での作業に耐えられるように考案した実用衣であり、"Loden"とは、この地域特有の厚手ウール生地を指します。
ローデン生地は紡績した羊毛を織り上げた後、縮絨・起毛させることで繊維の密度を高め、優れた防風性と撥水性を実現。
天然素材でありながら雨や雪を弾く構造をもち、通気性にも富んでいます。
19世紀後半には、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世が愛用したことで貴族階級の間にも広まり、やがて狩猟や乗馬など上流階級のカントリースタイルを象徴する存在へと昇華しました。
その後は都市部でも日常着として定着し、伝統を守りながらも洗練されたテーラリングを備えたコートとして再解釈されていきます。
デザインの特徴は、ゆったりとしたAラインのシルエットに加え、後身頃に深いインバーテッドプリーツを配すことで可動性を確保している点。
比翼仕立ての前立てや、襟裏にチンストラップを備える構造など、クラシックなディテールが実用と品格を両立させています。
カラーは伝統的に深緑(ローデングリーン)が主流で、自然と調和する落ち着いた印象を与えます。
ローデンコートは、機能服としての完成度と気品を併せ持ち、ハンティングウェアから都市のアウターウェアへと進化した稀有な存在。
ヨーロッパの伝統を色濃く宿す、実用と美の結晶といえるコートです。

本作は1980〜90年代頃のオーストリア製ヴィンテージ・ローデンコート。
アルプス地方の伝統を継承しながらも、当時の洗練されたテーラリング技術によって仕立てられた逸品です。
深みのあるローデングリーンのウール生地は、縮絨によって密に織り上げられた厚手のローデンウールを使用。
しなやかで滑らかな表面感ながらも、堅牢な保温性と撥水性を兼ね備えています。

フロントは比翼仕立てに近い端正な佇まいで、襟裏にはチンストラップを装備。
ボタンにはクラシカルなレザーボールボタンが用いられ、伝統的な意匠を色濃く残しています。
バックスタイルには深いインバーテッドプリーツを採用し、歩行時や乗馬時の動きを妨げない設計。
袖口のストラップやハンドウォーマーポケットなど、機能性を高める細やかなディテールも特徴的です。

シルエットはゆとりを持たせたAライン。身体を包み込むような柔らかなフォルムは、ローデンコート本来の実用美を感じさせます。
寒冷地の機能服でありながら、都会的な佇まいを持つオーストリア・ヴィンテージ特有の上品さを備えた一着です。

■size(cm)
表記サイズ:46
肩幅50.5/身幅61/着丈109/袖丈63.5

■textile
Shell:Wool85% Viscose15%
Lining:Viscose100%

■model

■condition
とても綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。

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