イタリアの革新的ワードローブを語るうえで欠かせないのが、"STONE ISLAND(ストーン アイランド)"です。
1982年、マッシモ・オスティがスポーツウェアカンパニー内で立ち上げた同ブランドは、ミリタリーやワークの機能美を現代的に翻訳し、ガーメントダイや特殊コーティング、反射・温度変化素材などの先端ファブリックを次々に実用化してきました。
コンパスパッチに象徴される探究心——素材・染色・構造への執拗なまでの実験精神——こそが、ストーンアイランドの核です。

本作はその思想を端正に体現した、98年春夏期の一着。
デザインを率いたのは、90年代半ばから2000年代後半にかけてコレクションを牽引したポール・ハーヴィー。
オスティ譲りの素材研究を受け継ぎながら、実用服のボリューム感や機能配置を洗練させ、日常着としての着地を明瞭にしたデザイナーです。
アイスジャケットやリフレクティブ系の開発で知られる一方、こうしたコットン基調のシャツジャケットにおいても彼の美点は明快で、軽さとタフさのバランス、構造の分かりやすさ、そしてガーメントダイによる奥行きのある表情づけにあります。

生地は細かな格子調のテクスチャーを持つコットン。
薄手ながらハリがあり、面で光を受けるたび織りの陰影がふっと浮かぶ表情。
仕上げはガーメントダイ特有のムラ感が穏やかに走り、縫い代やエッジにほのかな濃淡が現れます。
季節を問わず羽織れる軽快さ——それでいてワードローブの主役を張れる存在感。

ディテールはストーンアイランドの文法に忠実。
比翼前立てでフロントをフラットに整え、胸には容量豊かなフラップポケットを左右に配置。
袖口はボタン留めで微調整が可能、後ろ肩まわりと肘にベンチレーションのアイレットを設けて通気性を確保しています。
肩線はややドロップし、身幅にゆとりを持たせたボックスバランス。
シャツとしての軽快さとジャケットとしての包容力を両立する設計です。
左袖には同時期らしい筆記体ロゴ刺繍を控えめに——コンパスパッチとは異なる、98SSの空気を伝えるアクセント。

縫製は堅牢。
運針は均整が取れ、要所は閂止めで補強。
着用と洗いを重ねるほどに現れるパッカリングや、ステッチに沿って濃淡が深まっていく過程もまた、この個体の愉しみどころです。襟は開きすぎない台襟付きのレギュラーポイント。
ボタンは質感のある樹脂系で、ガーメントダイにより一つひとつ僅かに異なる表情を帯びています。

1990年代ストーンアイランドの名作群は、機能服でありながら街で映える均整感が魅力。
本作もまさにその系譜にあり、シャツの軽さで羽織れるユーティリティジャケットという回答。
インナーの厚みを選ばず、季節の狭間に頼れる一着です。
アーカイブとしての価値、現代のワードローブにすっと溶け込む即戦力——どちらの観点から見ても抜かりなし。
ストーンアイランドの研究と日常性の交差点を示す、ポール・ハーヴィー期の好例です。

■size(cm)
表記サイズ:L
肩幅54/身幅63/着丈78/袖丈65.5

■textile
Shell:Cotton100%

■model

■condition
とても綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。

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