1982年、イタリアの革新的デザイナー、マッシモ・オスティによって創設された"STONE ISLAND(ストーンアイランド)"は、ミリタリーとワークの実用性を基盤に、生地研究と染色技術で既成概念を更新してきたブランドです。
テント地や工業資材を衣服に転用する素材実験、完成後に染め上げるガーメントダイの確立、そして左袖のコンパスバッジ——。
機能を起点にした独自の意匠は80年代から現在に至るまでストリートとハイエンド双方に影響を与え続けています。
90年代後半から00年代半ばにかけては、英国出身のポール・ハーヴィーがデザインを牽引。
オスティの精神を受け継ぎつつ、より運動性と構築性を意識したコレクションを生み出しました。

本作は04SSに発表された“COMPACT”シリーズのDポケット・コットンジャケット。
デザインはポール・ハーヴィー。シリーズ名の通り、最大の要点はStone Islandが誇る“Compact Process”にあります。
これは、軍の制服を高温(130℃以上)で洗い縮ませる処理に着想を得た独自工程で、通常の織物を大幅に収縮させ、繊維密度を極端に高めるというもの。
布が縮みに縮む前提で「完成時より約50%大きく」裁断・縫製し、加工後に狙いのサイズへ落とし込むという逆転の設計思想が貫かれています。
結果として得られるのは、軽量でありながら高密度ゆえの防風性、表面に現れる独特のシボ感やパッカリング、着用と洗いに応じて深まる陰影。
触れた瞬間に分かる張りとコシは、同ブランドの研究肌を体現する質感です。

フロントは比翼仕立てで、前身頃左右に配されたアーチ状の大容量Dポケットが視覚の重心を作ります。
ポケットフラップと内側の縦開きスナップにより、物の出し入れを素早く行える実用本位の設計。
肩や袖のカッティングは可動域を妨げないパターンで、細かなステッチワークがコンパクト加工の収縮と相まって立体感を生みます。
袖口のカフ調整、背面センターシームの直線的な構成、そして左袖の取り外し可能なコンパスバッジ。
STONE ISLANDらしい機能と記号性が、道具としての信頼感とアイデンティティを同時に主張します。

素材はコットン。コンパクト加工により織組織が締まり、薄手でありながら頼れる質感に仕上がっています。
軽快な着用感でありつつ、実験的な布の表情がスタイリングに奥行きを生む一着。
Made in Italyの確かな仕立ても魅力です。
2000年代前半、ポール・ハーヴィー期のアーカイブは、昨今再評価が進む領域。
本作はまさに当時の研究成果をそのまま羽織る感覚でお楽しみいただけます。

Stone Islandの歴史を語るうえで、素材から設計を逆算する思想は欠かせません。
本ジャケットは、その方法論を最も純度高く示すプロダクトのひとつ。
日常の機能服でありながら、研究所発のアイディアを纏う特別感——。
ブランドのコアを手元に置きたい方に、強くおすすめできるアーカイブです。

■size(cm)
肩幅46.5/身幅52.5/着丈66.5/袖丈66.5

■textile
Shell:指定外繊維56% Cotton46%

■model

■condition
綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。

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