イタリアン・スポーツウェアの革新を語る時、"LEFT HAND(レフト ハンド)"という名は避けて通れません。
1990年代半ば、マッシモ・オスティが自身のスタジオで立ち上げた実験的レーベルであり、従来の縫製に頼らない熱圧着技術“Thermojoint”を全面に打ち出したことで知られます。
布地と布地を縫い糸ではなく熱で“接合”するという発想は、ミリタリーやアウトドアの機能美を都市生活へ翻訳してきたオスティの到達点の一つ。
短命ながらも、被服工学的なアプローチと独自素材の探究心でコアな支持を獲得し、現在もアーカイブ市場で高い評価を受けるブランドです。

本作は、まさにその象徴技術を冠した“THERMOJOINT”のフーデッドジャケット。
デザイナーとして名を連ねるマッシモ・オスティの設計哲学が端々にまで宿り、構造そのものが装飾になる——そんなプロダクトデザインの喜びを感じていただけます。
身頃から袖へと流れる切り替えは視覚的アクセントであると同時に、運動量を計算した立体裁断。
硬質な質感をたたえた高密度シェルは、熱処理でシームを軽量化しながらも、接合部の耐候性を高めています。
ミシン目が露出しないため風の侵入を抑え、着心地は軽快。左手発想のテクニカル・ピースたる所以です。

フロントは比翼仕立てのジップ&スナップ。フードは襟元と一体化する立ち上がりの良い設計で、雨風を受ける首周りをガードします。大きめに配されたハンドポケットは、手を差し込みやすい角度と容量を確保。袖口の面ファスナーや裾のドローコードなど、ミリタリー由来の実用ディテールが機能と造形のバランスを担います。ステッチが最小限に抑えられたミニマルな表情と、切り替えのリズムによるダイナミックな陰影。
その佇まいはモードとユーティリティの中間、まさにオスティ流の“フォーム・フォローズ・ファンクション”です。

“THERMOJOINT”シェルはしなやかさと耐久性の均衡を意識したテクニカルファブリック。
熱接合が生み出すフラットな面構成は、軽快な着心地を保ちながらも視覚的な精度を高めています。
シームレスな肩線とそのカッティング、前振りの袖、そして体を包み込むような丸みのある身頃。
動きに追随するパターンワークは、レイヤリングの自由度を高め、シーズンをまたいで快適に着用いただけます。

1990年代のLEFT HANDは、発色や風合いの表現にも果敢でした。
本作もまた、テクスチャーの奥行きが豊かで、都会的なスポーツウェアを品良く更新します。
視覚情報が多くなりがちなアウトドア由来のアノラックを、機能要素の整理と美しいプロポーションで研ぎ澄ます——それがこのジャケットの美点です。
アイコニックな素材処理と構造的ディテールが放つ存在感は、スタイリングに投入するだけで全体の重心を引き上げてくれます。

マッシモ・オスティは、素材開発と染色技術、ミリタリーアーカイブの再解釈によって、日常服に新しい規範をもたらした稀有なデザイナーでした。
LEFT HANDはその研究成果を“構造”で提示するための舞台装置。
なかでも“THERMOJOINT”の名を冠したプロダクトは、ブランドの理念をもっとも純度高く体現しています。
本作はアーカイブとしての価値のみならず、現在のテクニカルウェアの潮流に直結するリアルな機能美を併せ持つ一着。
オスティの思考が凝縮されたプロダクトデザインを、ぜひ日常に取り入れてください。

■size(cm)
表記サイズ:50
裄丈95/身幅65/着丈74

■textile
Shell:Vinyl80% Nylon20%

■model
176cm

■condition
着用感はございますが、ご着用いただく分には問題ございません。
その他は画像をご確認下さいませ。

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