"PRADA(プラダ)"は1913年、マリオ・プラダによってミラノで創業した老舗ブランド。
創業当初は高品質なレザーグッズを扱う工房として知られ、精緻な素材選びと職人技によってヨーロッパ上流階級の間で名を広めました。
その後、1978年に創業者の孫であるミウッチャ・プラダがブランドを継承し、伝統と革新を融合させた新しい時代のプラダを築き上げます。
彼女が手掛けた「ナイロン」素材を用いたアイテム群——特に「ポコノナイロン」を採用したバッグやアウターの登場は、ラグジュアリーと日常性の境界を再定義するものであり、90年代以降のファッション史における象徴的な出来事として語り継がれています。
工業素材をモードの文脈に持ち込むというその思想は、単なる機能美ではなく「知的で控えめなエレガンス」というプラダの哲学を端的に示すものです。

本作は、2000年代に発表された“PRADA UOMO”ラインのナイロンベルテッドコート。
ミウッチャ・プラダによるデザインで、ブランドが最も勢いを見せた時期のエッセンスを濃密に宿した一着です。
プラダにとってナイロンは単なる素材ではなく、時代と対話するためのメディアのような存在でした。
クラシックなトレンチやバルマカーンの構造を踏襲しながら、化学繊維特有の軽快さと光沢を纏わせることで、従来のラグジュアリー像を刷新しています。
ファッションと機能、アートと日常、そのすべての境界を曖昧にするミウッチャの姿勢が、このコートにも静かに息づいています。

デザインは、フロントにシングルボタンを並べた端正な面構え。
襟は小ぶりで、立てても折り返しても美しく収まるバランスに設計されています。
袖口にはアジャスタブルタブ、背面にはアンブレラヨークを備え、実用性と防風性を両立。
さらにウエストには共布のベルトを配し、バックル部分には控えめに“PRADA”の刻印が施されています。
ベルトを締めることでウエストラインに立体感が生まれ、開けて着ればナイロン特有のドレープが軽やかに揺れる構造。
ミニマルな表情ながら、動作や風の流れによって陰影が変化し、着る者の所作までも美しく映し出します。

素材はプラダの代名詞とも言えるナイロンを採用。
わずかな艶を持ち、撥水性と耐久性に優れたテキスタイルは、軽やかでいて芯のある存在感を放ちます。
裏地には背抜き仕様のレーヨンを用い、さらりとした肌触りと通気性を確保。
インナーを調整することで、秋口から春先までの長いシーズンに対応可能です。
シルエットはストレートラインで、膝上丈の絶妙なバランスが特徴。
軽量で持ち運びにも便利なため、出張や旅先でも重宝します。

全体に無駄のない構成ながら、縫製や縁処理の精度、ボタンホールの仕上げに至るまで、イタリア製ならではの確かな技術が感じられます。
見た目の軽さと実際の堅牢さ、そのギャップこそがプラダの魅力であり、機能素材をエレガンスへと昇華させたミウッチャ・プラダの哲学を如実に物語っています。
ナイロンという日常的素材を通して、知性と感性の均衡を描き出したプラダの傑作。
静謐でありながら、どこか詩的な気配を纏うこのベルテッドコートは、流行に左右されず、長く付き合えるアウターとしてワードローブに確かな価値をもたらしてくれる一着でございます。

■size(cm)
表記サイズ:48
肩幅46.5/身幅57/着丈95.5/袖丈66.5

■textile
Shell:Nylon100%
Lining:Rayon100%

■model

■condition
全体的に綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。

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