フランス南東部、地中海に浮かぶコルス島——透き通る海と切り立つ山々が同居するこの地は、自然とともに生きる文化を色濃く残しています。
古くから狩猟が生活の一部として根付いており、そのための装いもまた独自の進化を遂げてきました。
コルスタイプのハンティングジャケットは、そうした背景の中で培われた機能服のひとつです。
フランス本土の狩猟服に比べると独自に変化したパターンやデザインが特徴。
フィールドでの動きを阻害しないゆとりあるカッティング、そして弾薬や小物を収めるための多彩なポケットワークなど、実用性を前提とした構造が随所に息づいています。

本作は、そのコルスタイプをベースにしながらも、1990年代のイタリアで独自に再解釈されたヴィンテージピースです。
製作を担ったのは、"MODI di CAMPAGNA"——直訳すれば「田園の様式」や「カントリースタイルの流儀」を意味するブランド名です。
この呼び名が示すように、彼らは農村や狩猟、牧畜といった土地の生活文化に着想を得て、そのエッセンスを日常着に落とし込むことを得意としていました。
単なるレプリカや模倣ではなく、現代的な着やすさやファッション性を加味しながら、伝統のディテールを生かす。
そのアプローチは、クラシックなワークやハンティングスタイルに現代の軽やかさを融合させる、イタリアならではの感性を色濃く反映しています。

このジャケットは、外観からもわかるように、当時のイタリアンメイドらしい柔らかなラインと、フランス的な実用服の構造美が共存しています。
腰回りには大容量のパッチポケットを配置。
これはコルス島の猟師たちが弾薬や食料を携行するための仕様を踏襲しています。
フロントは比翼仕立てのボタン留めとジップを併用し、風や埃の侵入を防ぎながらも、着脱の容易さを確保。
素材は中肉のコットンツイルで、経年によるわずかなアタリや色褪せが、ヴィンテージ特有の奥行きを生み出しています。

シルエットは、オリジナルのハンティングジャケットよりも都会的に整えられており、厚手のインナーを仕込んでももたつかない絶妙なバランス。
袖口や裾にかけては適度にフィット感を持たせ、アウトドアだけでなくタウンユースでも映える仕上がりです。

この一着が面白いのは、フィールドギアとしての根幹を保ちながらも、どこか「サンプリング的」な再構築感が漂う点です。
デザインの細部には、実用服の文脈から逸脱しない範囲での遊びが見られます。
それはおそらく、伝統的なハンティングウェアの枠に収まらない自由さを意図したものでしょう。
実際に羽織ると、フランス的堅牢さとイタリア的洒脱さが絶妙なバランスで交わり、フィールドから街中まで自然に馴染みます。

時代と文化をまたぎながら生まれた本一着。
コルス島由来の実用性と、イタリア的感性による再解釈。
その両者が融合することで、単なるハンティングジャケットを超え、現代のワードローブにも違和感なく息づく存在となっています。
ファッションとしての完成度はもちろん、着るたびにその背景や文化の断片が感じられる——そんな知的で情緒的な魅力を備えたピースです。
長く袖を通すほどに、ヴィンテージならではの深みと、MODI di CAMPAGNAが紡いだ「田園の様式」が静かに表情を増していくことでしょう。

■size(cm)
表記サイズ:表記なし
肩幅51.5/身幅65.5/着丈83/袖丈67

■textile
Shell:Cotton

■model

■condition
とても綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。

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