“現代の狩猟服”という、一見すると時代錯誤にも思えるテーマを掲げながら、
その背景にある文化、技術、美意識を現代的に再構築するブランド——それが"ARTUMÈS & Co(アルテュメス・アンド・コー)"です。

このブランドは、日本のテーラリング技術をベースに、イギリスの伝統服やフランスの色気、
そしてイタリアの柔らかな仕立てを巧みにミックスし、服に“哲学”を持ち込むことを恐れません。
名前の由来となったのは、ギリシア神話の狩猟の女神"アルテミス(Artemis)"。
この象徴的な名の通り、ブランドはただのファッションではなく、「生活の中の矜持」や「個人の姿勢」といった目に見えない要素までも服に込めて発信してきました。

本作は、そんなARTUMÈS & Coが手掛けた、コットンジャージー素材のイタリアンカラー・ジャケット。
テーラリングの構造を忠実に守りながらも、肩の力が抜けた優雅な仕上がりは、まさにブランドの真骨頂と言える一着です。

まず触れておきたいのは、この素材。
一般的に「ジャージー」と聞くと、スポーティーでラフな印象を想起しがちですが、
本作に使われたコットンジャージーは、驚くほど密度が高く、上品な艶と張りを持った高品質素材です。
手に取った瞬間、しっとりとした重みと柔らかさが同居しており、
テーラードの構築感を保ちながら、まるでカーディガンのように滑らかに身体に馴染みます。

色味は、深い青。
群青でも藍でもなく、どこか静かな水面を思わせるようなニュアンスブルー。
着込むほどに生地の陰影が増し、陰と光のあいだで表情を変える、極めて詩的な色彩です。
都会の空気にも、自然の風景にも不思議と溶け込みながら、芯のある静けさを漂わせます。

特徴的なイタリアンカラーの襟元は、一般的なラペルとは異なり、首元にやわらかな立体感を与え、
第一ボタンを留めるか否かで大きく印象が変化する可変的なデザイン。
フロントボタンをすべて開ければ軽やかな羽織に、第一ボタンを留めればドレスシャツのような端正さも生まれます。

また、シルエットにも注目です。
ウエストは過度に絞らず、ボックスに近いシェイプを描きつつ、肩周りには絶妙なゆとりを持たせています。
それにより、視覚的にはクラシックに、着用感は極めてストレスフリー。
まさに「見た目は端正、中身は柔和」——この相反する魅力の両立が、ARTUMÈS & Coの醍醐味でもあります。

裏地は排され、全体が一重仕立てのため、着用時の軽やかさは格別です。
しかし、決して頼りないわけではなく、袖を通した瞬間に感じる“芯”のようなものが、
この服が単なるカジュアルウェアではないことを教えてくれます。

ボタンは小ぶりなホーンボタン。
艶や主張を抑えたその佇まいは、まるでジャケット本体の静謐さを象徴するよう。
ポケットはパッチ型で、全体の印象を軽やかに整えつつ、機能性も十分に確保されています。

このジャケットは、あらゆるシーンにおいて「品と自由」を同時に纏うことを可能にしてくれる服です。
ビジネスとカジュアルの境界線に立ちながら、どちらにも偏らず、
そして“装う”という行為に、少しの緊張と、豊かな余白を与えてくれる。

服とは、本来そうあるべきではないでしょうか。
それを思い出させてくれるような、実直で、美しい一着です。

■size(cm)
肩幅49/身幅57.5/着丈75/袖丈65.5

■textile
Shell:Cotton100%

■condition
とても綺麗な状態です。
その他は画像をご確認下さいませ。

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