かつてパリ6区、左岸の老舗メゾン街にひっそりと佇んでいた、知る人ぞ知るメゾン——"ARNYS(アルニス)"。
その扉の向こうに広がるのは、流行に翻弄されることのない静謐な世界。
知識人や芸術家の精神的ユニフォームとしての服が、そこにはありました。

アルニスの創業は1933年。
元々は高級テーラーとしてスタートし、戦後の混乱を経て本格的なメンズウェアブランドとして歩みを深めていきます。
特に名声を確立したのは1970年代以降。
アカデミー会員、作家、哲学者、建築家といったエスプリを重んじるパリ左岸の知識層たちがこぞって通うようになり、アルニスは単なるラグジュアリーではなく、左岸の文化の象徴となりました。

象徴的なのが"FORESTIERE(フォレスティエール)"に代表される、ゆとりある構築と機能美の融合。
クラシカルなカットでありながら、どこか衣服としての自由を宿すラインがそこにはあります。
一着に込められるアルニスの哲学。
それはディテールの精緻さであり、素材への妥協なき姿勢であり、そして何よりも、遊戯的な色彩感覚。

2012年、惜しまれつつもアルニスはLVMH傘下のベルルッティに統合され、店舗は閉店となった今日。
しかし、その精神と意匠は、いまなお愛好家たちの間で語り継がれています。
一点一点がまるで時の迷宮から取り出されたアーカイブのような輝きを放つアルニスの品々。
本品は、まさにその遺産を今に伝える一着。

柔らかで、揺蕩う雲のようなコットンローンクロス。
透け感に爽やかさを感じ、浮き上がるような軽やかさの虜になる。
都市のざわめきから一歩退き、静けさの中で纏う品格。
クラシックに見えて、どこか反骨的で、そして優雅。
ただの"クラシック"では終わらない、知性と余白の美学が息づくシャツでございます。
思索を重ねた人の手によって、生地の奥深くに織り込まれた哲学。
袖を通してその肌で感じていただきたい。

■size(cm)
肩幅53/身幅65/着丈83.5/袖丈62.5

■textile
Shell:Cotton100%

■condition
後身頃にシミがございます。
その他は画像をご確認下さいませ。

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