このジャケットは、第二次世界大戦後の冷戦初期、再編成された西ドイツの国防軍、いわゆるブンデスヴェーア(Bundeswehr)の空挺部隊向けに製造されたもの。
軍装史において特異な立ち位置を占める“スプリンターカモフラージュ”の生地は、幾何学的な破片のように構成された直線的パターンと、短いストロークで施された雨垂れ状のオーバープリントが特徴的です。
自然の風景に溶け込むという目的以上に、人工的で記号的な美しさが宿ります。
実用を前提としたはずのこのパターンが、戦後の軍服デザインにおいて極めて独創的だったことは、いま改めて見つめ直す価値を感じます。

構造としての特徴は、パラシュートジャケットならではの機能的設計にあります。
まず目を引くのは高めに設計されたスタンドカラー。
ファスナーやスナップボタンと組み合わされることで、風の侵入を防ぐ実用性を確保しています。
フロントの4つの大振りなフラップポケットは、空挺部隊の活動中における収納力を最大限に引き出すための設計。斜めの角度を持つポケットフラップのラインは、手の自然な動きに応じて配置されたもので、実戦環境下における迅速なアクセスを意識した機能的デザインが随所に宿ります。

シルエットは、ややオーバーサイズに近いゆとりを持たせたフォルム。
これはパラシュート降下時に他の装備やインナーを重ね着することを前提とした設計で、必然から導かれた形。
袖口にはボタン留めのアジャストタブが配され、風の侵入や動作時のバタつきを抑える役割を果たしています。

このように細部まで徹底して"現場"を想定したディテールは、今日のアウトドアやワークウェアにも通じる合理性を持っています。
このジャケットが特別なのは、その機能性の背後に宿る物語性。
スプリンターカモというパターンの誕生自体が、ライヒスヴェーア(Reichswehr:ヴァイマル共和国軍)時代に、簡易テントとして作成された"M-31ツェルトバーン"に用いられた明細パターンを源流としています。
ドイツの在り方が様々に移ろう中でも、改良を重ねながら用いられてきたスプリンターカモ。
発展の成果たるその模様は、どこかモダニズムすら感じ取ることができます。

現代においてこのジャケットに袖を通すということは、ただ"ミリタリー"というジャンルの魅力に惹かれているというだけではありません。
機能と造形美が見事に融合したデザインを通じて、衣服というものが持ち得る語りの力を再認識する行為でもあります。
トレンドとは距離を取りながらも、確かなデザインの骨格を持つこの一着は、静かに、しかし力強くその価値を主張し続けています。
今を生きる者の背中に、過去から未来へと連なる一筋の軌跡を映し出すように。

類稀なるフード付きかつ、オリジナルの樹脂ジップが使用可能な状態で付属した貴重なコンディション。
是非ともご一考くださいませ。

■size(cm)
肩幅53.5/身幅69/着丈67.5/袖丈56

■textile
Shell:Cotton100%
Lining:Cotton100%

■model
176cm

■condition
右肩のエポレット並びに、両袖のボタンの欠損。
ジップ部分のほつれがございます。
その他は画像をご確認下さいませ。

発送まで4日程度頂戴いたします。

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